「うわぁぁぁあん!」


慌てふためくクルー達。その中心には、大声を上げて泣きじゃくるなまえがいた。


「ほらっ。なまえー!大好きなお絵描きでも、」

「うぇぇぇえん!」

「なまえ!絵本!絵本読んであげ、」

「うっ......ひっく、うぇぁぁあ!」

「なまえ、こ」

「やだぁぁー!わぁぁぁあん!」


次々に必死で絞り出した案を繰り出すが、口も挟めないほどの泣きようにクルーたちは頭を抱えた。


「何があったんだよ!?」

「分かんねえよ!マルコ隊長の部屋の前通ったら、もう既に大泣きで...」

「隊長どこ行ったんだよ!」

「今傘下の所に伝達で外してるってよ!」


嘘だろ、と嘆く声が上がった。

普段はにこにこ笑っていて、あまり大泣きをすることはないなまえ。しかしまだ、たったの3歳だ。夜泣きはたまにあるらしいが、大抵マルコが隣で寝ており、あやして済んでいた。


「こうなったら、親父に頼るしかねえだろ!」

「でも、今隊長会議中じゃね?」


がっくりとうなだれる一同。打つ手もなく、皆眉を寄せてなまえを見た。1人がなまえの頭を撫で、とりあえず、と呟いた。


「俺たちじゃあ、どうしようもねぇ。マルコ隊長もいない今、なんとか出来るとしたら親父しかいない」


そうだな、と口々にクルーが言った。男がなまえを抱き上げようとしたとき。


「おいっ!マルコ隊長が帰ってきた!」

「まじかよ!」


ドアが勢いよく開き、叫んだクルーの後ろからマルコが姿を見せた。


「「「マルコ隊長ーっ!」」」

「うっ、うぇっ、」

「......何だか、凄いことになってるねい」


目を真っ赤にして泣くなまえ。涙目のクルーたち。一同が自分の部屋にいるその光景に、マルコは溜め息をついた。そしてクルーが開く道を進み、なまえに歩み寄った。


「なまえ、どうした」

「まるっ......!ふぇぇぇん」

「よしよし、」


マルコがふわりとなまえを抱き締めた。まだしゃくりあげるなまえを抱っこして立ち上がる。


「お前ら、迷惑かけたねい。ありがとよい」


そう言って部屋を出たマルコは、なまえの背中をトントンと叩きながら甲板へ向かった。


「ほら、なまえ。ちゃんとしがみついとけよ」


青い炎を放ち、なまえを背中に乗せたマルコは夜空に飛び立った。


「まーだ泣いてんのか?」

「...っ、ふっ、えっ」


ぎゅ、としがみつくなまえの温もりに、マルコはふと笑みをこぼした。


「いい子だな。いい子で、よく待ってた」

「まる......」


キラキラと星が輝くその下で。不死鳥は幼子を乗せて羽ばたいていた。少し重くなった感覚にマルコが身を翻すと、その腕の中には泣き疲れて眠りについたなまえがいた。


「こんなに目ェ腫らして」


マルコはその瞼に唇を寄せ、そのまま船へと引き返した。




背中に乗れるのは
愛しい妹だけ





(おかえり、マルコ。......寝たんだな)

(あァ。ったく、お騒がせな妹だよい)

(そうだな。だが、)

(?、何だよい。イゾウ)

(お前だけだ。なまえを泣き止ますことができるのは)


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