白ひげ海賊団が船をつけたその島は、人で賑わう栄えたところだった。


「なまえー。行くよい」

「はぁーい!」


とててて、とマルコに走り寄るなまえ。その長い足に勢いよく抱きつく。


「ほらよっと」


高い背をぐいと屈め、なまえを軽く抱き上げると、マルコはその腕の中にすっぽりと収めた。


「ん?これ、新しいのか?」


マルコは腕の中の少女が着ているTシャツをちょいと引っ張った。見たことのない、レモンイエローが爽やかなものだった。


「うん!おねえちゃんがくれたんだよ」


おねえちゃん、とは、白ひげについているナースのことだ。幼く人懐っこいなまえは、男共はもちろん、ナース皆にも可愛がられていた。


「良かったねい」

「うん!」


久しぶりの上陸。船上の生活に慣れているとはいえ、なまえはまだ子供だ。島に着いたときには決まってマルコやサッチがなまえを連れ出していた。

なまえを抱えたまま船から飛び降り島に立つ。食料調達だと言うサッチは今日は別行動だ。本人は泣きそうな顔で残念がっていた。


「ねー、まるー」


手をつないで歩き出した2人。なまえはマルコの中指を握りしめ、ぐいと腕を伸ばした状態だ。なまえの歩調にあわせてのんびり歩く凸凹な彼らの間を潮風が通り抜ける。


「なんだよい」

「あいす、たべよう!」

「アイス?」


なまえはマルコを見上げた。その額は少し汗ばんでいる。なんでも此処は夏島。日差しの強い今日は2人にも容赦なく太陽の日が降り注ぐ。


「アイスな。見かけたら寄ってやるよい」

「やったあ!ねーねー、2こ、たべてもいーい?」

「いいよい。余ったら俺が食べてやらぁ」


きっと一個目の半分あたりで回ってくるんだろうな、と思いながら、マルコはなまえの手を握りなおした。

メインストリートに入って早速目に入ったワゴン。近寄っていき、ケースの中のカラフルなアイスが見えるようになまえを抱き上げる。


「これと、これ!」


なまえが指差したのはイチゴとチョコの二色。ワゴンの親父は目を輝かせるなまえを微笑ましく見ながら、コーンにのせた。


「うめぇか?」

「うん!あまい!」


少し離れたベンチに座り、なまえは小さな両手でひしっとコーンを持って上のイチゴアイスを食べている。一生懸命口を開けて、若干溶けてきたそれにかぶりつく姿がなんとも可愛らしく、マルコは父親にでもなったように見つめていた。


「まる、はい!」


まだ半分も食べていないイチゴアイスを差し出すなまえ。もう回ってきたか、と思って手に取ろうとすると、なまえは首を横に振って。


「まだ、なまえもたべるよ。でも、まるにもあげる!」


にこりと笑うなまえの口元にはアイスが付いており、それを指で拭ってから目の前のそれを口にした。


「おいしー!?」

「......甘ェ」


パクパクとアイスを食べきった2人は、また手をつないで歩き出す。しかし徐々に増える人の波に、なまえは飲まれまいと必死だった。


「うわぁ!」


なまえの身体を持ち上げ、自分の肩の上に跨がらせたマルコ。急に晴れた視界になまえは歓声を上げた。


「たかーい!まる、たかいねぇ!」

「あー、なまえ。髪の毛引っ張るんじゃねえよい」


きゃーっと声を上げてマルコの髪の毛を掴むなまえ。のらりくらりと歩く2人は、周りの視線を集めて。ったく、と言いながらマルコが笑顔を浮かべるのは仕方ない。




君の好きな景色




(おかえりー!)

(なまえ、ただいま、だよい)

(なまえ、マルコ。お帰り)

(はーちゃん、ちいさくみえる!)

(マルコがデカいからなー。肩車かぁ、よかったね)

(なまえお帰りー!)

(さっち、ただいま!)

(なまえおいで!俺が肩車してやる!)

(えー。まるがいい)

((ガーン))

(だってよい、サッチ)

(まぁまぁ、そんな落ち込まないで。(子供って、残酷だ...))


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