「ふーんふーんふふーん♪ふっふっふーん♪」
「お?なまえごきげんじゃねーか」
「あー!びった!」
甲板の日の当たるところで、鼻歌混じりにうつぶせていたなまえ。声をかけたのはビスタだった。
「なんだ、絵描いてんのか」
「うんっ。びったも、かいたよ!」
ほらぁ!と言って笑顔で差し出された一枚の紙。そこには紫色のクレヨンで描かれた人のようなものがあった。
「すげぇな、なまえ。上手い上手い」
「えへへー」
3歳児の絵だ。ビスタと一目で分かるようなものとは程遠いが、幼いながらにもシルクハットや髭を一生懸命描こうとしていたのがよく分かる。ビスタがなまえの頭を撫でると嬉しそうに声を上げた。
「ほかもね、あるの!」
「どれどれ。見せてみな」
「これが、さっちでー。これが、えーすだよ」
サッチはオレンジ、エースは赤で描いたらしい。その人を象徴する色でよく描くものだ。ビスタは子供の観察力に1人感嘆していた。
「これは、はーちゃん。これは、じょず」
ハルタやジョズの絵も出てくる。
「これは?」
「あ......まだなの...」
なまえの手元にあった画用紙。それを指さすと、なまえは少ししゅんとした。
「あのね、それはね、らくよー」
「おぉ、ラクヨウか」
「うん...でもね、らくよー、じょうずにかけないの。どうしよう...」
まあ確かに、ラクヨウを描くのは難しいだろう。頭部はもじゃもじゃとしており、茶色の絵は他よりもごちゃごちゃしていた。じっと絵を見て悩ましげな顔をするなまえに、ビスタは微笑んで見せた。
「心配するな、なまえ。お前が描いたのなら、どんなものでもラクヨウは喜ぶさ」
「ほんとう...?」
「あぁ」
ビスタにつられて笑ったなまえを見てから、その目を横にやる。
「おっ。これ親父かぁ」
「うん!ぱぱ!」
手に取った白ひげの絵。それは今までの絵とは少しばかり違うところがあった。これまでの絵にはすべて、人物の周りにいびつだがカラフルな星がとんでいた。しかし、白ひげの周りにはさらにキラキラしたようなものが沢山あって。
「なまえは親父が好きなんだなぁ」
「ぱぱ、だいすき!」
そうか、と頭を撫でるビスタ。素直に気持ちが出てしまうのが、子供の可愛いところだ。
「あとねー。これは、まる!」
「ん?こりゃあ...」
そこまで言ってビスタは止め、にこりと笑った。
「上手く描けてるなあ。マルコ、喜ぶぜ」
ふふふ、と笑うなまえ。もう一度マルコの絵に目を落としたビスタは、きっとサッチ当たりが反応するのだろうと心の中でニヤリと笑った。
子供だからこそ
垣間見える愛情
(さっち、はい!)
(お?こりゃ、俺か!?)
(うん。なまえがかいたの)
(すげーよすげーよ!永久保存版だぜ!ありがとなぁ、なまえ!!)
(うん!はい、まる!)
(ありがとよい。...フフッ)
(なんだよ?......あっ!?なんで!?なんでマルコはハートだらけ!?)
(愛だねい)
(うそ!まじで!?)
(なまえ、俺も大好きだよい)
(きゃーっ)
(あっ、こら、頭にチューしてんじゃねえ!マルコォ!)
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