ガシャーン!という破壊音と男の悲鳴が響き渡る。ああ、またやったな。全く、後始末をするこっちの身にもなってほしい。まあ私もほとんど阿伏兎さんに任せきりなんだけど。で、神威だが彼は今日という日が何の日か分かっているんだろうか。…あの様子じゃ覚えてないな。というよりどうでもいい、といった感じか。だが生憎と私にとってはどうでもいい日なんかではない。一年に一日しかない大事な日だ。好きな人の、彼氏の誕生日なんだから。

「また喧嘩したの」
「別に俺から殴ったんじゃないヨ。売られた喧嘩を買っただけ」
「売る方も売る方だけど、買う方も買う方だよ」

あれだけ先輩に怪我させて校舎もところどころ壊しておいて、罪悪感の欠片も持っていないあたりが彼らしい。いつものことだけど。

「神威さ、今日は何の日だか覚えてる?」
「さあ?世界メロンパンデー?」
「そんな日はありません。神威の誕生日だよ」
「あれ、もうそんな時期だっけ。今日何日?」
「だから誕生日だってば。六月一日」

どうやら本当に興味がないらしい。ここまで反応薄いとは。

「で、何?その俺の誕生日を祝ってでもくれるの?」
「うん、それなんだけど、…目、閉じて」
「え、何?」
「いーから」

神威が怪訝そうな顔をしながらもちゃんと目を閉じたのを見計らって、私は彼の唇に自分のそれを押し付けた。神威は目を見開いて固まっている。まあ当然だろう。私が自分からこんなことをしたのはこれが初めてなんだから。

「…え、」
「私の本当の意味でのファーストキスをプレゼント。これは貴重だよ?」
「な、」
「ハッピーバースデー神威」




乙女思考でごめんあそばせ


100608

〇凵様に提出。
うわああ一週間も遅れてしまった。しかもうまくお題に沿えてない気が…あわわすみません><
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テーマ「人外ファンタジー」
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