「我が君?店の名前はどうするのですか?」
「ああ、考えてある」
ベラ姉さまの買ってきた板と、いくつかの塗料。我が君の杖のひとふりで板は削られ形を変え、美しく染色されていく。命を奪っていた杖が、今は新しい物を生み出している。なんといとおしいことか。
「できた」
「これは、異国の言葉ですか?」
「東の国、日本語だ」
「柔らかい雰囲気がします」
「“わがきみのぱんつやさん”」
「ワガキミノ、パンツヤサン」
「ああ」
「すてきです、とても」
出来上がった看板には、『わがきみのぱんつやさん』と彫られている。日本語のひらがなだという、それは、文字の形がやわらかく、また、響きもなだらかであった。
「おや、できたんだね」
「ええベラ姉さま、我が君が」
「あら、素晴らしい」
「おれさまにできないことはない」
「ふふふ、さあ、次は肝心の品物の手配ですね」
「よし、やるぞ!」
意気込んで、二階へ羊皮紙や羽ペンを取りに行った我が君。わたくしとベラ姉さまで、看板をそっとドアの上に取りつけ、オープンまで見えないように、雨風を防げるように、魔法をかけておく。
絶対に、すてきな店になる。我が君や、わたくし、ベラ姉さまや、スネイプさん、ルシウス様、やがて産まれてくる新しい命、みんなを、この看板は見守っていくだろう。