店のオープンへの道のりは順調だ。今日も日刊予言者新聞の一面には、『例のあの人、謎の死!?』の文字が並んでいる。
「新聞は嫌いだ」
「何故です?」
「おれさまを名前で呼ばない」
「寂しいのですか?」
「…別に、そんなわけじゃない」
いつのまにか、二階は我が君の居住スペースになっていた。そして恐れ多くもわたくしが主人の身の回りのお世話をさせていただいている。
「セブルスとベラはどうした」
「スネイプさんはホグワーツの教員採用面接だそうです。ベラ姉さまは看板を作るのに必要な材料を買いにいっています」
「ルシウスは?」
「息子さんがもうすぐ産まれるそうで、しばらく来れないとのことです」
「…そうか」
以前よりもぐっと近くなった距離。そうして気がついたのは、我が君は随分と寂しがりだということだ。わたくしは常にそばにいるが、しきりに他のピンキーズたちの行方を気にしなさる。
「…子供か」
「ええ、喜ばしいことです」
朝日の差し込む部屋。暗くじめじめとした屋敷とは全くの正反対。我が君がダークロードから、一気にここまで来た理由は、一体なんなのだろうか。
カランコロン
「我が君、ただいま戻りました」
「ああ、ベラか」
「姉さま、お帰りなさい」
ベルが鳴り、二階へ上がってくるピンクの影。我が君が一緒に朝食を取ろうと言ったので、わたくしは急いでベラ姉さまの分も用意する。
「いただきます」
トーストとイチゴジャム。紅茶の香り。朝だ。