引き続き、ロンドン。わたくしにはどこへ行きたいという目的もなく、我が君についていくまま、立ち寄った紅茶専門店。寂れた外見とは反対に、中はほのかに甘い香り。棚に並んだ数々のパッケージには目もくれずレジへ向かう我が君はどうやら店主と知り合いのようだ。店主の顔はローブのフードで隠れているが、体格からして男性である。

「おや、今日は直々に。ですか。梟ならいつでも飛ばしますよ」
「たまにはいいだろう」

随分親しそうだ。店主の声は若々しく、そして、どこか聞き覚えがあった。

「可愛らしい方まで連れて、いつもの仏頂面はどうされたんです?」

フードの影から視線を感じて、なんだか居心地がわるい。我が君とわたくしのつ、つ、つつつないだ手のあたりを、とくに、じっとり見られているようで。

「ごちゃごちゃうるさい。さっさと寄越せ」
「はいはい。10ガリオン、いただきますよ」
「チッ。相変わらず、ぼったくりもいいとこだな」
「あなたからたっぷり取っておかないと商売やっていけないので」

受け取った紅茶葉はいつも飲んでいる香りがした。(それにしても、じゅうがりおんなんて…)





あの声は誰だったか。また町を歩きながら、思考をめぐらす。ああ、そうだ、

「あれは、レギュラス・ブラックなのでは?」

わたくしのすこしあとに、デスイーターになったブラック家の次男。長男は確か、腑抜けとかなんとか。

「変わり者だ。ピンキーズにならずに、マグルに紛れて紅茶店を始めるなど。」
「しかし、贔屓にしているようじゃないですか」
「そんなことはない」

決まり悪いように、しかめっ面。我が君の感情表現が日に日に豊かになっていくのは、とても嬉しい。

「……なにを笑ってるんだ」
「ふふ。いえ、なんでもありません」

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