「あの…、ちょっと、すいません、」
「え?」
膝丈のワンピースが淑やかでうつくしい。ふわふわの髪を揺らしながら、笑顔と共に差し出された手紙に、わたくしは閉口した。
「あちらの彼に、渡してくださいませんか?」
あらしのよかん
わたくしにどうしろと。これは所謂ラブレターというものではないだろうか。あちらの彼とは多分我が君のことで、いや今お店にはわたくしと我が君しかいないから、絶対に我が君で。
「我が君、少しいいですか?」
手持ちぶさたにしていた我が君は視線だけを寄越した。手の内にある手紙は重たく重たく、うすぺらの紙であるのに。
(渡したくない)
去っていった女性はうつくしかった。もしも、我が君をとられてしまったら。それは、いやだ。つい、手で覆い隠すようにしてしまう。
「…なんだ。いいたいことがあるなら早くしろ」
「はい、」
視界の端には今日新しく入荷したパンツ柄のパンツが見える。ああルシウス様はまた頑張ったのだなあ。売れるといいなあ。手紙、てがみ、テガミ、
「手紙、が、」
我が君は首を傾げた。そしてわたくしが何かを持っていること気がつくと、なにもいわずに、冷たい手で取っていってしまう。「くだらない」そのまま、杖を振られた。あっ!とわたくしが声を上げる内にそれは灰になり、何故だか我が君は、不満げな表情でわたくしを見た。
「こんなもの、頼まれるな。断れ」
(女性には申し訳ないと思う。が、やはり嬉しい。)
嵐、起きる前に消滅