「おれさまは、パンツ屋さんのオーナーに転職する」
我が君の凛とした声は、たくさんのデスイーターたちで埋まった広間の空気を貫き、よく響いた。わたくしは仮面の奥で、目を見開いた。今、我らの主人は、何と言った。
「闇の帝王やめる、あきた」
いつもと変わらない声の冷たさだ。その存在の重圧感も、いつもと何ら、変わらない。畏縮する、ひれ伏す、従いたくなる。惹き付けられる、魅力もそのまま。
「おまえたちも、デスイーターとかやめろ、ださいから。仮面を取れ。」
それは『命令』であった。どこそこのマグルを始末しろ。などと言うのと同じ、命令であった。何人かが、戸惑いながらも仮面を外し始めた。
「ローブが、暗いな」
我が君はそう呟くと同時に、優雅に杖を振った。ショッキングピンクの洪水が起こり、わたくしの目を焼いていく。呆然と立ちつくしたまま、わたくしの意識も焼かれていく。
ああ、我が君、あなたの身に何が起こったと言うのですか?
ピンク色の波はついにわたくしの身も飲み込んだ。わたくしの纏っていた漆黒のローブは一転、ショッキングピンクに。薄暗い広間の中をひしめく明るい色はいっそ不気味にも見える。
「嫌ならば、去れ。今日からお前たちはピンキーズだ」
誰一人として声を発することができなかった。主の言動に、ただ目を見開くだけだった。
「よし、みんなでパンツ屋さん、やるぞ!」