「あなた、帰りましょう?」
「ひ、ヒイィ…!たすけて!」
いつの間に誰が連絡を取ったのだろう(ベラ姉さまに違いない)。閉店直後にやって来たナルシッサさんはそれはそれは美しい笑顔を浮かべながら、悲鳴をあげたルシウスさまの髪を掴んだ。
ルシウスさまが助けを求めてわたくしを見たけれど(我が君は勿論、ベラ姉さまもスネイプさんも面白がってにやにやしているだけだから、ルシウスさまはわたくしを見るしかなかったのだ)、生憎どうしようもない。明日、店に来れる程度に加減してくださいねとナルシッサさんに目で訴えてみる。素晴らしい笑顔で返された。
ああ、駄目だ。
「…さようなら、ルシウスさま」
バチン!消える夫婦と悲鳴。ベラ姉さまとスネイプさんも、我が君に挨拶をして、後を追うように帰っていった。
「我が君、お疲れ様でした」
「マグル狩りより疲れた」
「沢山お客様が来てくれましたね」
「うん」
すこしお砂糖を多めに入れたホットミルクをお飲みになれば、やわらぐ表情。今日一日はずっと緊張なさっていたようだ。
「おまえのいう通りだったな」
「え?」
「おれさまの店が失敗するはずなかった」
「ふふ、今日は一日目ですよ?まだどうなるかは分かりません」
「なかなか、辛辣だな」
「これがわたくしですので」
我が君はにやりと笑った。
「さすが、おれさまの部下だ」