おれさまはお前たちと格が違うんだ格が。とおっしゃって我が君が翻したのはワインレッドのローブ。今日のために新調なさったらしい。新しいにおい。スネイプさんは一度漆黒のローブに戻したが、ベラ姉さまに仲間はずれとからかわれ、裏地のみがピンク色のものにしていた。
わたくしはあの日、我が君の手によって変えられた、ピンク色のローブを。ベラ姉さまとルシウス様も同じだ。
「いよいよですね」
我が君からの返答はない。
「緊張なさっているので?」
「……もし誰もこなかったら、どうしよう」
尊大な態度の中に見える不安。朝食もほとんど召し上がらなかったし、寝不足のような、疲れた表情。我が君は眠れなかったのだ。今日というこの日が、不安で!
「大丈夫ですよ」
「おまえに何がわかる」
「我が君のお店ですもの。成功するに決まっています」
だるそうに椅子に座る我が君の手を取る。冷たい。
「わたくしは、あなた様のそばにおります、ずっと」
そしてぎゅう、と握る。長い指、美しい、羨ましい。まるで、彫刻のような手。体温の低さと、この御方の孤独。冷たく、冷たく、わたくしの肌を浸透していく。
「…では、誓え」
甘い響きを滲ませた声が流れる。
「おれさまに、自分に誓え」
握り返された手。主の眼光が、わたくしを貫いた。
「決して離れないと。誓え」
それは『命令』であった。また、わたくしの『意志』でもあった。