ブラックくんを叩いてしまった!あの傷ひとつない、きれいな肌の、頬を、顔を、叩いてしまった!

幸いにもその場面はひとに見られていなくて、噂になることはなかったけど、わたしがブラックくんを叩いてしまった事実は変わらないし、わたしがそのまま逃げてしまったことも、変わらないし、ブラックくんが、わ、わたしに、すきっていったことも、本当の話のまま。そして、わたしはブラックくんを避け続けていた。ブラックくんのことが大好きなのに、わたし、なんてことをしちゃったんだろう。

考えれば、ハンカチを拾ってくれたとき、わたしは初めて彼と会話をした。あれ、どうして、彼はわたしを好きになったんだろう。そんな、ひとめぼれをされてしまうような外見をしていないことは、分かってる。

あ、もしかして、うそ、なのかしら。わたしがあんまりにも見つめてたから、ちょっとからかってやろうって気持ちで、好きなんて、いったのかしら。

あ、そうか。なんて自惚れ!恥ずかしい!真に受けて、勘違いして、しかも、叩いてしまうだなんて!

体が熱くなるほど恥ずかしくって、変な汗も出てきた。友だちにも心配されたから、医務室に行ってくるねといって、わたしは外に出た。おおきな木に寄りかさって座って、息を吸って、はいて、ああ、もう。

ガシャリガシャリ。上から音がして、緑色の葉が落ちてくる。

「キャ!」
「いってぇ…あ、ごめ、おれ、ひるね、してて」

そうして、突然、ブラックくんが落ちてきた…!





「やあ、偶然」
「う、ん」
「久しぶりだな。きみが俺のこと避けてたから」
「あ、あの、ごめんなさい。避けてたのも、その、叩いちゃったことも」
「ん、許す」
「いたかった?」
「すげえ痛かった」

なんか、ふつうに話せている。木から落ちてきたブラックくんはいつもここでお昼寝をするのが日課らしい。授業は?って聞くと、そりゃあ、まあ、わかるだろ?わるい笑顔。きゅんて、心臓がいたくなる。

「で、返事は?聞かせてくんないの?」

息がつまるようだった。ブラックくんのきれいな顔を見たまま何も動けなくなったわたしに、彼はやんわりとわらう。

「本気なんだけどなあ」
「で、でも、今までしゃべったことなんてないよ」
「一目惚れじゃあ信じてくれない?」
「うそ、そんな、有り得ない」
「じゃあ信じてもらえるように、頑張るからさ」

少し隙間をあけて座っていた距離が縮められて、片手を、取られた。指をからめられて、もう片方の手は、わたしの髪をゆるく撫でて、わあ、だめ、はずかしい。

「だから、俺のこと、好きになって」

なんか矛盾してるよ、ブラックくん。それにわたし、もうとっくに、大好きだよ



110130 ニコ

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