頃合いをみて、というかみんなの悲鳴がやんでから、わたしがリビングに戻れば、優雅にお紅茶をお飲みになっているヴァルブルガ様が。あれっ茶葉家にあったかな。
「みんなは…?」
わたしが首をかしげると、ヴァルブルガ様はきれいなほほえみと共に、視線を部屋の隅へうつした。
「…………ワオ」
みんな、折り重なって倒れてる…。(チュンチュン)わ、朝だー…。
ばちんばちんばちんどどんとゆきます(予告)
少し経って、みんなは動き出した。
まだ気を失なって目覚めないリリーちゃんを、ここぞとばかりにジェームズくんが眺めている。レギュラスくんとピーターくんは体育座りして動かないし、リーマスくんは虚ろな目で、何も映っていないテレビを見ているし、無事なのは、このくそばばあ!とさっきから何度も叫んでは吹っ飛ばされるを繰り返すシリウスくんと、ジェームズくんのみだ。ジェームズくんはリリーちゃんしか見えていないだけだろうけど。「みんなに何をしたんですか…?」「ふふふ。コツがあるのよ」気絶させるのにコツ…?こわいです。
「まあいいわ。これでポートキーの件は不問!帰るわよ!」
「あ、はい。またいらしてくださいね。」
「おーもう二度と来るな!」
「あら?あなた、なにしてるの?」
「ハ?なにが?」
「全員、帰るに決まってるじゃない」
「エッどういうことですか!」(リリー覚醒)
「はあなに言ってんだよ?!!くそばばあくそばばあこのくそばばあくそバナナ!!!!」
「かあさん僕まだかえりたくないです」
「僕はみんなに優しくされたいです」
「チョコレートたべたいです」
「リリーをながめていたいです」
「ぎゃっ!みんないきなり正気にかえんないでこわい!」
*
それから、わたしの家ではばちんがたがたどかーんばちんがたがたどかーんが繰り返された。ヴァルブルガ様に引っ張られて姿をばちん!と消したみんなが現れたりまたヴァルブルガ様にがたがた連れていかれたりどかーん現れたりばちん消えたりがたがた現れたりどかーん消えたり。とにかくすごい音。これ近所迷惑じゃないかな大丈夫かな?
ばちん!
「帰んねえっつってんだろ!!」
ばちん!
「かえるわよ大人しく言うことききなさいキー!」
がたがた!
「近づくなさわんなこのっ」
がたがた!
「キエエエエッ」
どかーん!
…なんかもう心配になってきたよ。とくにヴァルブルガ様がどんどん酷いことになっていくのだけれど。
みんなが帰ってしまうかどうかの問題に直面するわたしは、いやに冷静である。だって、ひとりも落ち着いてるひといないんだもん…。このまんまじゃ収集つかなくなっちゃうよ。ていうかみんなのお泊まりセットまだわたしの家にあるのになあ。
ばちん!
「ええいこうなったら!」
「ひゃっなに…!?」
ばちん!
「いい加減になさい!」
「あっちょ、ヴァルブルガさまちょっと、まっ、」
どかーん!
うううう!きっきもちわるいなにこの吐き気!
「……あれ?」
シリウスくんに腕を掴まれ、気づけばわたしは、深い緑色の、ふわふわした絨毯の上にへたりこんでいた。
111028 ニコ