まさか全裸を見られるなんて思ってもみなかった。というかそれを想定していたら人としてだめな気がする。
そうして夜はおわる
「レイ、レイ」
「は、は、は、い、はい?」
「………俺、ここで寝ればいい?」
「いや、いや、むこう、むこう」
びっくりした返事ひとつでこんなにどもる人間がいたんだ。さっきはものすごい勢いで名前を聞いてくるからつい俺も全裸だってことを忘れて(いやでもなんか違和感があって少し考えたけど)普通に会話をしてしまった。あそこで俺は悲鳴をあげるべきだったんだろうか。まあこいつが叫んだからそれでいいや。いや、叫ぶ叫ばないの問題じゃあないのか?
とにかく、出会って一日もたっていない女に全裸を見られたなんてけっこうショックだった。…出会ってから何日かたてば見られてもいいというわけではない。けっして。
だけど、帰り方の検討もつかないからけっこう長い間世話になりそうだし、これからもこんな調子は気まずすぎる。
前を歩くレイの頭はあきらかに挙動不審にぷるぷるしている。階段をあがって、トイレの位置も教えてもらい、寮の部屋より少し小さな部屋に案内された。
「ここ、わたしの兄さんの部屋。使って」
「あのさ、俺本当に気にしてないから」
「?」
「…なんでもない。ありがとな」
「…どういたしまして?」
ああ、言葉が伝わらないって歯がゆい。(どうやらありがとうの部分しか聞き取れなかったようだ)
明日からどうしよう。姿現しで帰れるものなのだろうか。それだったら楽でいいんだけど。
一生このまま、だったら。
100302 ニコ