夏休みなんか大嫌いだった。あの母親と顔をあわせるなんて嫌だったし大抵は部屋にひっこんでいたんだけど、昼寝して、起きたら異国。だなんて。俺もう死にたい!


拾われました


湿気と暑さにやられてぷっつり意識が途絶えた。目が覚めたら今度は知らない家知らない女。ここは日本で、言葉が通じない。幸い杖はポケットに入っていたけど通訳魔法なんて使ったこともないし覚えてもいない。それに思いっきりマグルっぽいから魔法つかったらまずい気がする。

「ここに、いて」

へにゃりと笑った女。帰り方の検討もつかないからそうすることにした。



「家族はいないのか?」
「?」
「家族、どこ?」
「……家族、旅行、わたし、ひとり、負けた」

まだ頭がぼうっとして体がだるい。ひたすらみつめつづけられるのも居心地が悪く、さっきから思っていた疑問を口に出せば通じているのかいないのか。わけのわからない解答。この涼しい部屋はたぶんリビングなんだろうけどそうとう広い。この女が一人暮らしをしてないことはその様子でわかる。

「これ、わたし」

紙をひろげられ、女の指さした先には日本語でなにか書かれている。多分こいつの名前だろう。(レイ、とか言ったっけ)はしごみたいな変な図。つつ、と名前の下からその線を伝っていく女の指。ついた先は×。…わけわかんねえ。

「わたしの家族9人。旅行招待される8人。わたし負けた」

…なんとなくわかった、気がする。レイの家族は9人で、旅行に招待されたのは8人。この変な図はきっとくじ引き的な何かだろう。それでレイは負けて、というかはずれで、置いてきぼり。

「わたしひとり、夏休みの間。広い家。夜、こわい」

ああ、だから俺拾われたのかな。きっとこいつ、さみしいんだ。



100302 ニコ

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