ああなんてちいさくて、やわらかい体なんだろう。


たちあがる


「しりうす、しりうす、」

苦しそうな声で我に返り、抱きしめていたレイの体を離した。危ない!と思った瞬間、杖を振ることができないなんて、はあ、俺今まで学校でなにやってたんだ。謝りにきたらしい子供に、レイは何故だか飴玉をあげていた。



「シリウス」
「なに?」
「帰る?」
「どういうこと?」
「シリウスは魔法の国に住んでる」

帰る?と繰り返したレイに、俺は何も言うことができなくなってしまった。魔法の国、という言葉。ジェームズ、リーマス、ピーター。俺の大切な仲間。ホグワーツ!もちろん忘れるわけない。忘れるわけが、ないのだ。

「帰って、シリウスの、家」

そこでやっと、今日一日、レイの元気がない理由に気がついた。レイだって俺と一緒にいたかったのだ。俺と一緒に暮らしていたかったのだ。言葉は少ししか通じないけれど、相手の表情と纏う雰囲気から伝わる気持ちがあるのだ。

「いつかは帰るよ」
「……うん」
「だけど」
「うん」
「そんな顔のレイを放って帰るなんてできないに決まってるだろ」

最後の言葉は通じなかっただろうけど、俺の気持ちはちゃんとレイに届いたらしい。泣きそうな顔でにっこり微笑む彼女を今度はやさしく抱きしめた。



100716 ニコ

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