「ここに、いて」レイはへにゃりと笑った。その笑顔がたまらなくいとしい。「うん、ずっといる、いっしょにいよう」おれも笑った。
そして、世界がはじけとぶ。
ああなんだ、夢だったのか。
「マシュ、マロ?」
「………」
目が覚めたらすぐ目の前にびっくりした表情のレイがいて、寝ぼけていたおれはどうやら、レイの口にマシュマロをおしあてていたらしい。なんでマシュマロ?俺にだってわからない!ていうかどこから出てきたんだ。
「えっと、」
「うん。」
「…おはよう、レイ」
「うん、おはよう」
言葉の壁もあるし、うまく通じ合えないだろうなと判断したときは適当に流すのが暗黙の了解みたいなものになっていて、マシュマロのことも例に漏れず流された。
何はともあれ、朝だ。
その日のレイはなんだか落ち着かないようで、みそしるにジャムを入れたり、部屋の中を行ったり来たりしていた。しまいには一人で絨毯につまづいて転んだり、花瓶を割ったり、俺は何度も杖を振った。
「どうかしたのか?」
「ありがとう、大丈夫だよ」
レイはへにゃりと笑った。その笑顔は夢の中のものよりずっと悲しそうだった。
100509 ニコ