俺としては、気味悪がられるかなと、ものすごく勇気を出して言ってみたわけだけど、レイはきらきら、こぼれそうなくらい目に星をはじけさせて、「すごいよシリウス!」…つくづく予想外の反応を見せる女の子だとおもう。
ぶえっくしょい
おやすみ、と言ったあと部屋を出ようとしたら、レイに腕をつかまれた。振り返ってみればレイはもう眠っている。…まじか。
ベッドの横に座って、これからの俺のことを考えてみた。杖はここにある。レイの家族だってそのうち帰ってくるし、俺がいつまでもここにいていいわけがない。それに、向こうがどうなってるかもわからないのだ。ジェームズ、リーマス、ピーター。手紙の返事もしていないまま。
やってみるか?試してみるか?俺の腕をつかんでいるこの細い腕をはずして、杖をすこし振り、姿現しをしてみればいいだけなのだ。それはとても簡単なこと。やってみればいい。試してみればいい。帰れなければその時はその時。とりあえず、とりあえず、やってみれば。
だけど、できない。
すー、すー、とかすかに聞こえてくるレイの寝息。柔らかそうな黒髪。閉じられた瞳。ゆるやかに弧を描く唇と、おさない寝顔。レイが、ここにいて、って言ったんだ。俺はここにいなくちゃいけない。レイのそばにいなくちゃいけない。
レイのそばに、いたい。
100503 ニコ