「何してんだ」

「んー?自殺、とか?」

「馬鹿かお前」

「馬鹿じゃないよーちゃんと保温魔法かけてあるし。ほかほか!」

真白な雪がふわふわと学校の屋根に積もっていく。眼下に広がる禁じられた森も同様で、一層厚く雪化粧をしたそれは普段の嫌な雰囲気は微塵も感じさせない。最近俺たちがみつけたホグワーツ城の屋上。そこに寝そべって雪に体が半分埋もれたレイはへにゃりと笑った。彼女の頬と指先は赤く、吐く息は景色と同化することなく白いものだとわかる。

「嘘ついてんじゃねえよ」

こんなに冷たくなってるじゃねえか。と膝をついてレイの手を取れば、予想以上の冷たさで反射的に手をひっこめてしまった。

「ははっ、冷たかった?」

「凍傷とかで指もげるぞ」

「それはそれで楽しいかもね」

むくりと上半身だけを起こしたレイはへにゃへにゃ笑ったまま、俺の頬に触れた。やはり彼女の手は冷たくて、わかってはいたものの肩がビクリとはねあがった。

「クリスマスに死ぬとか、縁起悪いこと言うなよ」

「クリスマスじゃなきゃいい?」

「……お前の親の話、聞いたよ」

クリスマスはレイの両親が死んだ日なのだと、エバンズに教えてもらった。マグル生まれのレイ。両親は死喰人の戯れに、クリスマスの余興に、レイの目の前で殺されたのだと、そう聞いた。

「ねえ、シリウス。もしわたしが魔女じゃなかったら、今でも父さんと母さんはわたしの側にいたと思う?」

ぼふ、と音を立てて、レイはまた雪の中に体を沈めた。俺もレイの隣で寝そべった。背中に感じる冷たさと、頬に落ちてくる雪。ピリピリと肌が傷んだ。

「このまま一緒に死んでみる?」

「………………寒いっ!!」

無理だ寒すぎる。もう中に戻ろう、とレイを立ち上がらせれば彼女はよろけて俺にもたれかかった。冷たすぎて体がうまく動かない、とのこと。

「やっぱ馬鹿だよお前」

ぎゅう、とそのままレイをだきしめる。冷たくて冷たくて、心臓の鼓動を感じてもこれは死体なんじゃないかと思ってしまうほどだった。

「お前が生きててくれるなら、俺はそれだけでいい」

「…気障なセリフ」

でも嬉しい。ちょっと泣けるね。

顔をあげたレイの瞳からは涙が流れていて、手でぬぐえばそれはとても熱く感じた。



冷たいキス





2009/12/24 ニコ

ささやかながら、メリークリスマス!クリスマスに何の予定も入っていないニコですこんにちは\(^0^)/うわさみしすぎる!いいんだばいとでかせぐ、ん、だから!←


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