前を見据えよ!


 を
  償
   う
 こ
     と
    な
  ど
  で
 き

     い
      !




「あなたは、あなたが誰かを殺した数だけ、死ななければならない。だけど、一度死んだものはもう戻ってこないから、何度も死ぬと言うのは、出来ない。さて、どうしよう。きみ」

ねえ、どうしようか。這いつくばる彼の腕に置かれた私の足に、ぐっ、ぐっ、ぐっ、力を込めてみた。骨張った、細い感触だった。気色が悪かった。こんな貧弱な、この腕が、この腕が!幾人もの命を千切りとっていったのだと思うと、憎しみが溢れかえってしょうがなかった。ぐっ、ぐっ、ぐっ



骨が、われ
る。つまりは、女の力でもわれてしまうほど脆かったのだ。そんな事実は、その腕のひきちぎった命の重みに対して不釣り合いに感じた。

「っ、」
「痛いか?痛いか。そうか、痛いのか。」

どん!

にわかに恐怖の浮かぶ青白い顔。

「おや、面白い。きみ、きみには痛覚がある。恐怖心もある。苦痛を感じ声をあげることができる。恐怖に震え上がることができる。なんと。世紀の大発見!」

人殺しには痛みを感じる器官なぞないのかと思っていた。私の足の下で、砕けていく骨。

どん!どん!

繰り返し踏む。力を強くしていく。パキ、パキ、と細かく砕け散る。彼の息がどんどん荒くなるのが分かる。嗚呼!くだけているのは彼の骨か、体か、虚栄心か!



さあ!苦しめ!
悲鳴を上げろ!恐怖しろ!

狂 え !




「ぁ、ぁ、ああ…!」

終に聞こえた、声。戦慄!

「痛い?痛いかしら?

だけれど、ねえきみ、彼、彼はわたしが今彼に与えているような恐怖と苦痛を、多数の人々に植え付けたのだ。



罪!!それは罪だ!
(しかしわたくしの行為は正当化される。それは彼が罪人だからだ。罪人へ暴力を奮うわたくしは罪人ではないのか?否、)





「狂おしいね。狂おしい、甘い誘惑だ。」
「やめ、やめろ、やめろ!!」

ぜ っ き ょ う 。





「この、サディストめ!」





101031 にこ

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