「先輩、行きますよ」

「……………ええ?」

絶賛拉致られ中ですこんにちは!確か今までわたしは芋虫50グラムすりつぶしてたはずなんだよ。え、いやちがうちがうわたしそんなサディスティックじゃない魔法薬学の授業でです。はい。若干ローブにとびちった芋虫汁がくさいんです。早く洗わなきゃ。

「レーギューたあーん?」

「………………」

わたしを小脇に抱えたまま(ムキムキだ!あ、魔法使ってんのか)レギュは黙々と歩き続けた。てゆーか授業どうしたんだ授業。わたしもサボってるみたいになってるじゃないか無遅刻無欠席無早退の伝説グッバイわたし!

「あのー、レギュラス、くん?」

「………………」

ああだめだこの子!完全黙秘だ。わたしは諦めて体の力を抜き死んだふりをすることにした。

小脇に抱えられてるせいで地面しか見えない。(よいそうだ)視界は石の廊下から芝生にかわる、そして砂利に。(んん?砂利?)(み、ずうみ、かな)(なんだレギュは大イカのお嬢ちゃんと逢引か)

「てかいつから大イカなんかとつきあってるのよわたしはどうしたの!この泥棒猫があ!」

「ちょっと黙っててください」

あ、やっとしゃべった。やったねレギュラスくんおめでとうこれでキミも言語コミュニケーション能力を持った人間に仲間入りだよ…あれ、痛い寒い、なんだこれ。

「アホですね」

レギュはわたしを見下ろしている。見下ろして…ああ、わかった。わたし理解した レ ギ ュ ラ ス に つ き お と さ れ た ! ハローハロー、わたしただいま絶賛湖の浅瀬に腰を打ち付けてます。(絶賛二回目だよ)てゆーか寒い、ふつーに寒い。季節は冬です。

オイコラぼっちゃんレディにこんなことしていいのかちくっちゃうぞダンブルドア先生に!って文句を言おうとしたらなんとまあレギュラス・ブラックくんもダイブしてきたわけです。彼は見事に着地しましたが。

跳ねた水はぜんぶわたしにかかってきた。イジメだと思う。

「ほんとにどーしたのさー」

びしょびしょのレギュラスの頭を軽く叩くとあろうことか甘えるように抱きついてきやがった!ときめくなこんちくしょうでも全体重でこられたら支えきれないんだつまり後頭部を強打したわけです。あ、耳に水が入る!

「なんだいなんだいレギュちゃんは甘えたがりだなあもう。水もしたたるいい男ですか、そうなんですか!いんやどっちかってゆーとキミはおんなのこか「黙っててください」……はい」

「………………」

「………………」

「………………」

「……なんで黙ってるんですか」

「ええなんでって」

「………………」

レギュはどうやらとっても情緒不安定らしい。まず授業に乗り込んできてわたしを拉致するところからおかしい。あとわたしを突き落とすのはまだ普通だとして(かなしいかなそれが現実なのです)自分まで入ってきちゃうあたりもうイカれてる。わたしに抱きついてきちゃうあたりは明日地球は滅亡するらしい。

「うれしーなこんにゃくー」

「ばかですね」

「どーせばかですよー」

「………………先輩、」

「んー?」

「すきです」

「うん、わたしもすきー」



情緒不安定です。だって思春期だからさ!





2009/12/02 ニコ

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