望んだものはいつから霞んで、いつから焦げていったのかなんてわからない。何を望んでいたのかすら、知らない。ただ覚えているのは彼女は強くて美しかったということ。彼の瞳はどこまでも真っ直ぐで、わたしの瞳とは交わらなかったということ。みんなが彼女を愛していたということ。わたしが好きだったひとも、わたしが師として尊敬していたひとも、わたしを支えてくれたひとも、みんな彼女に奪われてしまったということ。こんなわたしが彼女を、羨ましく思うことなんて、許されないということ。

いくら綺麗に着飾ったって、彼はわたしを見てくれることはなかった。(彼は彼女がどんな姿になろうとも彼女だけを見ていた)いくら強くなったって、師はわたしを見てくれることはなかった。(師はいつだって、彼女のことで頭がいっぱいだった)ジャックは、ジャックはわたしのことを見てくれてたとおもってた。お前は綺麗だよって、言ってくれた。どうしようもなくさみしいよるに、抱きしめてくれた。なのに、なのに、彼女との濃厚なキスシーンを見せつけて、しんだ。しんだのよ、ねえ、ねえ、

「どうして、」

ねえ、どうして、

あなたが泣いているの。ジャックを殺したのはあなたでしょう。そうじゃない!最期、最期にジャックのぬくもりを奪ったのは誰、あなたよ。罵りたかった。ウィルに愛されて、ジェームズを殺して、ジャックまで。最低よ。なかないでよ、なんで。なんで。エリザベス、どうしてあなたが泣くの。わたしもう涙なんて出てこないの。わたしの愛した人はあなただけを見ているのよ。わたしの尊敬した人はあなたを守ろうとしてしんだのよ。わたしを護ってくれた人はあなたが殺したのよ。何が足りないの。何が足りないの!わたしの欲しいものはぜんぶ持ってる!ねえエリザベス!あなた!

(最低よ、あなた最低よ!)(いくらこころのなかでさけんでも、エリザベスはなきつづける)(エリザベス!あなた!わたし、が、わ、わたしのほしいもの、ぜんぶ!ぜんぶ!!)(なんのために?彼女、ないているの)

指先まで、爪の一枚まで、涙一粒まで美しい、あなたが嫌い。(嫌いよ!大嫌い!)喉がかれるまで罵りたかった。

「俺がそばにいてやろうか?」

結局よわむしなわたしは、彼女を罵ることも、彼を追い続けることも、彼の生存を確かめることも、彼を救うことも、ぜんぶ中途半端に動けないまま、近くのぬくもりに、逃げる。

望んだものは何だったんだろう。焦がれたものは何だったんだろう。もうわからないよ、わからない。(だれかわたしをあいして)



100311 ニコ

2と3の間のイメージ。ジェームズはなんかジャックたち的にだとしんだの?状態なかんじ?最後のはわたしのだいすきなバルボッサです



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -