「レギュ、明日も会える?」

指を絡ませながらレギュラスにそう言うと、彼はこっちを向いてふわりと笑った。

「レイのためなら時間なんていくらでも用意しますよ」

絡ませていた指を握られながら耳元で囁かれれば、顔がかあっと熱くなる。(ほらね、前に感じたあの痛みは勘違いだったんだわ)ありがと、と顔を俯かせて言ったら、くすくすと静かに笑う声。

「笑わないでよもう!」

握りこぶしをつくって腕を振り上げると、レギュラスにその腕を掴まれてひっぱられた。必然的に、彼の腕の中にすっぽりと、収まる。

「んー、レギュだいすきだよー」

「僕もです」

そうして、くすくすと笑いあった。先輩じゃなくてレイって、名前で呼んでよ。と頼んだのは三日ほど前の話で。

レギュラスと付き合い始めて二週間。シリウスと別れて三週間。まだ、レギュとキスはしてません。てゆーかぶっちゃけシリウスともしてないんで、わたしのファーストキス、まだなんです。



「いちゃいちゃだねー」

「…………」

「付き合い始めてから毎日湖のほとりで会ってるよねー」

「…………」

「うわー、いつまで抱きあってるんだろうねー」

「…………」

「僕も早くリリーとラブラブしたいなあ」

「…………」

「なんかしゃべってよシリウス!僕が独り言してる痛い奴みたいじゃないか!」

「…………いまのままでも十分痛いだろ」

目線はレイとレギュラスに向けたまま呟けば、ジェームズにストーカーまがいの君には言われたくないな、と言われた。認めたくないけど、その通りだった。(ああくそいつまで抱きあってるんだよおいレギュラス!にやにやしてんじゃねえ!)

レイとレギュラスのいるところから約十メートルほどの距離の位置にある、木。の、陰。で、毎回俺は二人を見ているわけであって。それはここ最近毎日のように繰り返されていて。リリーにあいたいリリーがたりないリリーあいしてるリリーリリーリリーリリーと呟くジェームズに目を移しながら、俺は一度見たきりの、レイの泣きそうな顔を思い出していた。

『レギュ、だいすき』

あのときの表情が忘れられない。いや、忘れたくない。まだ俺に少しでも気持ちが残っているんじゃないかって、そんな未練がましいどろどろの、だけど俺にとっては輝かしい期待の光を持たせてくれたから。

だけどその光もそのとき一瞬垣間見えただけで次の日の朝からレイは痛いぐらいの笑顔を常に浮かべていた。いやいやいくらなんでも一日で吹っ切れるとかはないよなきっと無理して笑ってるんだそうだそうだ今にレイは俺のとこに戻ってくる!なんてレイとレギュラスを見張り続けて早二週間。二人のいちゃつきは増すばかり。

おいレギュラスお前ばりばりの純血主義者じゃなかったのかグリフィンドールなんか大嫌いタイプじゃないのかなんでよりによって俺のレイを!

て、あ、わ、う、あ、あああああ!レギュラスの、顔と、レイの、顔が、ちか、づいて!

まだ俺でさえレイとキスしてないのに!

「ちょ、シリウスま「すとおおおおおっっぷ!」

「わぎゃっ」

「っ!?」

ジェームズの制止の言葉なんて聞こえない。俺は今まさに唇のふれそうになっていた二人の間に、人生最速で突っ込んだ。


どうしてもだめですか?


(わたしのファーストキスが!)(ふー、保守成功っ)(…僕もうしーらない)(一辺と言わず何度でもしんでください糞兄貴)

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