友達はいるけど基本一人で行動することが多いわたしは今日も今日とて一人図書室にやってきた。明日期限の魔法薬のレポートがあるのだ。レイブンクローは意欲旺盛というけど魔法薬だけは勉強する気になれなくて、授業なんてもちろんできるはずもなくレポートを出された。最悪だ。薬なんてお店で買えばいい。それがわたしの今まで生きてきた中での揺るぎない結論で、これからも変わらないと思う。

天井までいっぱいの本。ぜんぶ読破するという目標は入学してから三日目であきらめた覚えがある。図書室に入り、入り口から数えて十三番目と十四番目の本棚の間。奥まで行って、そこを左。薄汚れた小さな窓と、二人用の小さな机と椅子。誰にもみつかっていなかったらしいほどよく狭いそのスペースが気に入っていて毎日使っていたのだけれど。というか内緒で錯乱の呪文をかけてわたししか使えないようにしていたのだけれど。

グリフィンドール悪戯仕掛人容姿端麗頭脳明晰スポーツ万能プレイボーイ女たらし。これらがわたしのシリウス・ブラックに対する印象と聞いたことのある噂だった。本の埃っぽい匂いと、図書室独特の静けさ、羽ペンがかさかさ鳴る音とか、インクの匂い、そういうものがすきなわたしにとって正反対だったし時々彼らがやってくると静けさがぶち壊しになるのでむしろ嫌いの部類に振り分けしていた。

その彼が、シリウス・ブラックが、座っているのだ。

薄汚れた窓からのぼんやりとした柔らかい光がつやつやした彼の黒髪と絡み合って、輝いている。机に置かれた本をめくる(本なんて読むんだ)長くて細い指の動きが普段見かける彼とはまったく違っていた。こんなに知的な顔をしていただろうか。もっと、こう、世界の女はおれのもんだぜ!みたいな顔じゃなかったっけ。

「ここ隠してたの、アンタか?」

不覚にもその姿に見とれていたわたしは突然のブラックくんの声に驚いて手に持っていた羊皮紙を落としてしまった。そのグレーの瞳は未だ本に向けられている。

隠してたのって、え、あ、錯乱の呪文のこと、だよね?ていうかそうだよどうしてバレたのどうして平然と座ってるの!二重三重に呪文かけといたのに?なんなんだやっぱり天才は天才なのか。

羊皮紙を拾いながら必死で考えた。ああ、寮の扉の質問には簡単に答えられるのに。答えが見つからない。よりによってこのひとにバレただなんて最低最悪のシチュエーション。いじめられる殴られる脅される怒られる、もしくは先生にちくられて殺される!まじお前調子乗ってんじゃねえよごらあとか、言われる!正直、スネイプみたいにはいじめられたくないのだ。誰だって平和に学校生活を送りたいに決まってる。

「…ち、ちが、ます」

長い長い沈黙のあとやっと絞り出した答えは空気に溶けるように消えた。…わたし確かレイブンクローだった、よね?どうして知的な返答ができないの。途切れ途切れで情けないくらい震えた声。がたん。本を閉じて席を立つブラックくん。ややややっば!そして、指先ひとつ動かせなくなったわたしに彼の長い腕が伸びてきて、ひ、しぬ…!

「秘密」
「……え?」

ぽん、と優しく頭に置かれた大きな手の感触に強くつむっていた目を開くと、背景に艶やかな花たちが咲き乱れる、ブラックくんの笑顔があった。間近で初めて見るそれはわたしの心臓を爆発させるのに十分で。

「俺とお前だけの秘密。ここ、俺も使っていいだろ?」

その問いにうなずかない生物なんてこの世界に存在していないと思う。



2010/02/23 ニコ

アンケート結果より、シリウスで、すきかもしんない。なんですけど、しまりがないまとまってないぐだぐだぐちょぐちょ/(^0^)\

そんなこんなで一万打お礼はこれで最後です。管理人の頭がないせいでかっすかすの少量でごめんなさいおわびに後ろでんぐり返しやります。これは得意なんです。そ、それでは!これからもぼそぼそやってゆきます。ありがとうございました!

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