夜になれば仕事を終えた騎士団のみなさんが来るけれど、昼間のグリモールド・プレイスにはほとんど人が立ち寄らない。あたしにとってそれは好都合だった。
「いいのか?モリーに怪しまれているんだろう?」
「あたしあのひと苦手」
「返事になっていないな」
最近は少し太ってきたみたいだ。それでもシリウスさんは相変わらず細い。身体中にある刺青も消えない隈も、彼の過酷な昔を思わせた。骨張った腕があたしのお腹にまわっている。首筋に当たる髭がくすぐったくて、あたしは身をよじった。
「あたしたち、何か悪いことをしてる?」
「私たちではなくて、私が。だな」
「それって、おじさんが学生にえっちなことしたから?」
「…まあ、うん」
シリウスさんは後悔してるのかな。あたしと寝たこと。
「そんなことはない」
「ァ、ちょっと、」
「こんなにも愛しているだろう」
屋敷僕と絵画の動く音しかしない家の中で、あたしたちはまた、悪いことをする。