リリーは授業でわたしは空き時間。天気も気分ももよかったのでわたしは中庭のベンチに座り本を読んでいました。とりあえず今のところシリウス・ブラックには何も言われていないし!ああ、しあわせ!

「アイカワさん、ちょっと話したいことがあるんだけど」

え、嫌です。

わたしの平和な時間は1分もしないうちに壊されました。嫌いなひとランキング第二位の、ジェームズ・ポッターくんの登場です。返事をしていないのにポッターくんはわたしの横に腰をおろしました。やめてください。

英語の発音が変、は、トラウマになっていて未だに誰かとしゃべるとき気になり続けているのです。しかもこのひとはリリーのストーカーです。セブルス(リリーと仲が良いので自然と友だちになっていました)をいじめます。そして、自己中心的なところが、わたしは一番嫌いでした。なんでも自分が一番だなんて思わないで!って話です。(いやまあ実際彼は首席なんだけれど)

「僕、君に謝りたくて。本当にごめんね」
「…………………え?」

だから彼の口から謝罪の言葉がでたときとても驚きました。そりゃあもう、シリウス・ブラックと手を繋いで校内一周できるくらい、驚きました。

「な、なな、なにを、ですか?」

どもりました。驚きと混乱とで、手にしていた本が膝から落ち、ベンチからも落ち、芝生の上にぼす、と低い音を立てました。ポッターくんはその本を拾ってわたしに手渡しながら(こ、こんな気づかいのできるひとだったなんて…!)、眉を下げ困ったように笑いました。ナルシストで傲慢ちきな彼の笑顔しか見たことのなかったわたしはよけいに混乱しました。

何を彼に謝られることがあったでしょうか?彼の悪戯に巻き込まれたこともないし、それに六年前の発言のことも、今更彼が謝ってくるようには到底思えませんでした。それどころか彼は自分の発言など忘れているでしょう。

「六年前、君に失礼なことを言っただろう?ごめん」

予想は見事に裏切られました。せっかく拾ってもらった本がまた芝生にむかっていきます。ぼす。その音を聞きながらわたしは心が溶けていくのを感じました。ジェームズ・ポッターというひとは、気づかいのできて、謝ることのできる、いいひと!

「いっ、いやあの、そんな!あ、あれは、じじ事実だったし、わたしの発音へ、変だったし、だから、えっと、そんな、謝らないで!」
「はは!君、おもしろいんだね!」
「おおおおおおも?」

そしてポッターくんはもう一度ごめんね。と言ったあと、わたしに手を差し出してきました。

「ジェームズって呼んで、レイ。六年間無駄にしちゃったけど、僕ら、これから良い友だちになれるよ!」

太陽みたいに眩しい笑顔を、ぽっ、ジェームズが浮かべたので、わたしも自然と口角があがりました。胸のつかえがとれたようで、とても清々しい気分です。差し出された手にわたしの手を重ねました。


バンッ!!


「よし!よくやったジェームズ!」
「本当に君おもしろいよ!こうも見事にひっかかってくれるなんてさ!」

痛い、臭い!

ポッターくんに、近距離で、糞爆弾を投げられました。(彼自身は魔法で身を守ったよう)

近くの木の上からシリウス・ブラックも落ちてきて(綺麗に着地していました、憎たらしい!)、二人で拳と拳を合わせ笑いあいながら校内に戻っていきました。

「あ、レイ!良い友だちになれると思ったのは本当だからねーっ!」

最後に振り向いてわたしにこう叫んだポッターくんは、確かにあのナルシストで傲慢ちきな笑顔でした。…あの眼鏡にいつかたらこを突っ込んでやろうと、強く強く強く強く、誓いました。とりあえず今は早くシャワーを浴びたいです。…くさっ



2010/01/04 ニコ

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