久しぶりに姿をみせた太陽の光が天窓から入って、眩しいほど明るい。いや、眩しいのはそれだけじゃないんだけど。

「それでね、そんときのシリウス・ブラックの顔ってば……」
「ふふふっ!いやだレイ!これ以上笑わせないでちょうだい!」

女の子っていうものは、僕が考えているよりずっと弱くて、脆くて、きれいな涙を体が干からびるんじゃないか、ってぐらい流す。だけど女の子は、僕が考えているよりずっと、強い。矛盾だらけの不思議な生物。男の僕が計画した通りになることなんて、あるわけなかったんだ。

「なんだルーピン、今さら気づいたのか」

スネイプはなぜか優越感たっぷりに、呆けている僕を見下しながら言った。リリーとレイは小一時間ほど前にふたりで腕を組みこの部屋に帰ってきた。そして今、きゃっきゃっと笑いながら、写真を大量に現像している。

「…今ごろは、レイもリリーも、シリウスとジェームズとうまくいってるはずで、」
「……確かなことがある」
「……何?」
「今、レイとリリーはこの部屋で笑っていて、ブラックとポッターはどこかの埃っぽい教室で、……泣いてるってことだ」

…うわ、スネイプの笑顔が気持ち悪い。(にやり。)でもあとでレイにポリジュース薬のことを問い詰められていて、それは見物だった。



「リーマス、よし、俺たちはぜんぶ許す!」
「は?」
「リリーと密会してたことは、ゆるせな…シリウスごめんって。……うん、許す!」
「はあ?」

寮の部屋に戻ってくると、シャワーを浴びてきたんだろう、髪の濡れているシリウスとジェームズが僕を待ち構えていた。両脇をふたりにがっちりと固められて、うわ、水とんできたつめたいな。座らされたのはふかふかのソファー。(あれ?これ、マクゴナガル先生の部屋で見たような…)

「やっぱりバレた?」
「もちろんお見通しさ!」

僕の手を取りながら笑ったジェームズはいつも以上にスキンシップが激しい。シリウスはどこから取ってきたのか、とても高級そうな箱に入ったチョコレートを持ってきた。

「リーマスにやるよ!」
「…ありがとう」
「それでさ、」
「うん、やだよ」
「なんでまだ俺なんにもいってない!!」
「レイにどう接したらいいかとか、どう話しかければとか、どう謝れば。とかでしょ?」

図星だったらしい。シリウスはさっと顔を青くした。そして髪をぐちゃぐちゃかきわけて、うわまた水とんだ、僕の前にひざまずく。

「お願いだリーマス!お前ならわかるだろ!?」

わ、なんだっけこれ、ドゲザとか言うやつ?床におでこをこすりつけそうなほど頭を下げて、必死な様子はわかったし、シリウスが本気なことも十分伝わってきた。力になりたい、とは思う。けれど生憎、僕がシリウスにあげられるアドバイスはたった一言だ。しかもなにも参考にならない。

「女の子って、僕らには理解不能だよ」

シリウスとジェームズはわけがわからないと言った風に顔を見合わせた。

次の日、何事もなかったかのように、むしろいつもより元気よくしゃべっているレイとリリーを見て、ふたりはようやく僕の言葉を理解したようだ。

「あ、ねえそういえばどうしてシリウスはやけにやつれてるの?昨日は別に、そこまでじゃなかったよね?」
「ああ、夜中にレイから手紙がきたらしいよ。『バーカ、はげろ!』って書いてあったんだって」
「う、ん、そう、か」
「ちなみに僕のところにもリリーからきたんだ、手紙」
「…何て書いてあったの?」

ジェームズはポケットから羊皮紙を取り出して僕にみせた。『やーい眼鏡!』…リリー、君って、……。いやレイもなかなかだけど…。ムーニー、君の言う通りだよ。女の子って僕らには理解不能だね。ジェームズがリリーをみつめながら笑った。



2010/05/04 ニコ

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