レイはシリウスの暴言とか暴挙とか暴走とか、そういうのをぜんぶふくめて好きになったんだと思ってた。なんて心の広い女の子なんだジャパニーズってみんなそうなの?って、少し日本人について図書室で調べたりもした。(スシは食べてみたいな!)あのブラックモードもシリウスと付き合い始めてから見ていなかったし、そして何より相棒に向ける笑顔はあんなに輝いてたんだから!僕のリリーには負けるんだけどね!つまりレイがシリウスを好きになったってことは僕の中で疑いようのない事実だったんだ。まさかぜんぶ演技だったなんて!この僕が見破れなかったんだ。きっと彼女は名女優になれるよ。

とにかくなに?今までの話を要約したら、レイはシリウスを好きじゃなくてむしろ嫌いで、ぎゃふんと言わせるために演技しながら付き合ってて、だけど今は好きになりかけてる。ってこと?なんだ結果オーライじゃないか!レイがシリウスをすきになる、シリウスはレイにべたぼれだから、ハッピーエンド!それじゃだめなのかい?

「そんなに簡単にいくわけないでしょ?」
「どうしてさ!」
「…ほんっと、馬鹿ね。」

ほこりっぽい教室の中。僕とリリー。二人きり!(リーマスは急に用事があるとかなんとかで行ってしまった。気をきかせてくれたのかな!さすがムーニー!)一応人避け呪文と防音呪文をかけてからリリーに説明してもらったんだけど。僕は納得がいかなかった。別にこのままでいいじゃないか。今までのことが嘘だったとしてもこれからまだ時間はいっぱいあるし、シリウスのことだからレイが好きなふりをしてたって聞いても笑って許しちゃうんだろうし、何の問題がある?

「放っておいても二人はうまくいくよ!リリーが心配する必要はないさ!」

ぱしん。乾いた音が鳴って、頬に鈍い熱さ。

「ブラックやあなたには、レイの気持ちも、わたしの気持ちも、一生わからないわ」

荒々しく教室を出ていくリリーのきれいな緑の瞳からは涙がこぼれていた。だけど僕には彼女が泣く理由がさっぱり理解できなくて。(おかしいな、リリーのことならなんでもわかってるつもりなんだけど)頬のじわりとした痛みだけが妙にリアルだった。



図書室に駆け込むと、奥の方の席にレイが座っていた。レイの姿が見えた瞬間また涙が出てきて、「リリー?どうしたの?」って、やさしく背中を撫でてくれる腕の暖かさに悔しさがあとからあとから溢れてきて、涙もとまらなくて、(すきなひとにイエローモンキーなんて何度も言われて、だけどどうしようもなく好きで、相手は遊びなんだ好きになったらだめ、ってわりきる虚しさを、ブラックがわかるはずないんだわ)

「ねえリリー、いつもと逆だね」

理由も何も聞かずに笑ってくれるレイに今日ほど救われたことはなかった。(私の気持ちだって、ポッターには一生理解できないのよ。今さら素直になれないもどかしさも、悔しさも。どうでもいいことには気づくのに、どうして肝心なところに気づいてくれないの)




2010/02/26 ニコ

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -