「は、黄色い猿が」

こんにちはみなさん。レイ・アイカワ。なにを隠そうジャパニーズガールです。先日ホグワーツから入学許可証なるものをいただいたので素直にここ、ホグワーツ魔法魔術学校に入学してまいりました。無事に組分けも済み(ぐりふぃんどーる、でした)、そしていま、わたしの目の前にはひとりの外人さんがいます。黒髪に灰色の瞳。わたしにとって外人さんは全員かっこいい!って存在だけど、このひとは一際かっこいいと思いました。同じ寮の机で隣の席にいたそのひとに、慣れない英語を使って、初めまして、これからよろしくおねがいします。と、あいさつをしたわけです。

彼は今、何を言ったのでしょうか?確かにわたしの耳にはイエローモンキー、と、はいりました。わたしが黄色い猿?わけがわかりません。しかもどうして初対面のひとにこんなことを言われなくてはいけないんでしょう。

「やめなよシリウス」
「ジェームズだってそう思わねえか?」
「まあ確かに…、うん、英語の発音も変だよね。」
「ははっ、言えてる!」

癖毛の眼鏡のひともでてきました。英語の発音が変。ええそうです。この間までただの日本の小学生をわたしはしていたんですから。ここまでひとの話を聞き取れるようになっただけ進歩したんです。黒髪のひとも、癖毛のひとも、わたしを見てゲラゲラと笑い続けました。きっとさっきのイエローモンキーというのも、わたしをけなす言葉にちがいありません。

バシャッ

「な、お前なにすんだ!」

ここまで頭にきたのは初めてでした。だからつい、というかもう無意識に、カボチャジュースのたっぷり入ったゴブレットを、座っている彼の頭の上で傾けてしまったのです。こんなひとの第一印象がかっこいい、だなんて、自分が許せません。

「ゴキブリ以下だね」
「は!?おい!待てよ!!」
「何て言ったんだい!?」

日本語で彼らに言ったあと、わたしは急いで席を移動しました。今度はやさしそうな雰囲気の、赤毛のおんなのこの隣です。

「どうしたの?大丈夫?」

さっきカボチャジュースをぶっかけているところを見ていたのでしょう。彼女は心配そうに、その緑色のきれいな瞳をわたしに向けてきました。わたしが曖昧に笑うと、これからよろしくね。と、花のように愛らしい笑顔をみせてくれました。彼女のたっぷりした赤毛がふわりと揺れました。

それが、わたしとシリウス・ブラック、わたしとポッターくん、わたしとリリーの、出会いでした。仲良くなったのはもちろんリリーだけで、あとの二人とはお互いにお互いが存在しないかのように振る舞い、そういう険悪な関係になりました。

黄色い猿。というのは東洋人をとぼす言葉だとあとでリリーが教えてくれました。よけいに、シリウス・ブラックというひとが嫌いになりました。



「なあ、お前俺と付き合えよ」

そうして六年生の九月一日、新入生の組分けがおわったあとの宴の時間。わたしの目の前の席に座ったシリウス・ブラックがにやりと笑い、嫌い、は、大嫌い、に、変化を遂げたのです。



2010/01/02 ニコ

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