グレーの瞳を細め勝ち誇ったような笑顔を携えて彼はわたしに言いました。
「次のホグズミード、一緒に行ってやるよ」
こんっなにイライラするデートの誘いを受けたのは初めてです。拍手喝采したくなるほど上から目線。どこの王子様ですかあなたは。ここは紳士の国じゃないんですか?「ありがとうシリウス!うれしい!」でも、ここ何日かで体はシリウス・ブラックの彼女、という立場に慣れたよう。思ったこととは裏腹に笑顔がとびててシリウス・ブラックの申し出を快諾していました。(以前とは真逆ですね)
「へー、デートかあ。」
「うん。…やだなやだなー」
「断ればよかっただろ」
「うーん…」
「ちょっと!話がずれてるわ!」
リーマスとセブを仲間にしてから毎晩、夕食と消灯までの2時間程度をSJC(シリウス・ブラックとジェームズ・ポッターをぶっつぶせの会!の略です!)に費やしているわけですが、もっぱらわたしの愚痴を話す割合が多くなっています。リリーも注意はしてくるもののメモ用の羊皮紙と羽ペンを机の端に寄せわたしの愚痴を聞いてくれる気満々です。「あーもう!リリーだいすき!」「わたしもよ!」((女の子って一体…))
そんなこんなで、最初は少しわだかまりのあったセブとリーマスも今ではすっかり仲良くなっています。
「おい、何ぼーっとしてんだよ」
「…え?あれ?」
いつの間にか、いつの間にかホグズミード!もう、SJC(1:9=話し合い:おしゃべり、ですが)が楽しくて楽しくて、時間がたつのはあっと言う間。雪のちらつき始めたホグズミードはコートやマフラーに身を包んだ生徒で溢れかえっています。
わたしの隣には黒のコートと細身のジーンズを憎たらしくも着こなしたシリウス・ブラック。かくいうわたしは真っ赤なコートとお気に入りのスカート、最近買ったブーツ、軽くお化粧。いや、だって一応久しぶりのお出かけなんです!相手が誰であろうと浮かれちゃうのはしょうがないでしょう!
…これじゃあわたしがデートを楽しみにしてたみたい。真っ白い息を吐きながらさむいとこぼすシリウス・ブラックをみながらそう思いました。黒と赤の同じような型のコートでおそろいみたいになってしまったのは不幸な偶然です。
「シリウス!ハニーデュークス、行きませんか?」
シリウス・ブラックが甘いものを嫌いだという情報をリーマスから手に入れたわたしはさっそく実行に移しました。これで「ああ?んなとこ行かねえよ」とかで他の女の子とどこかに行ってくれれば万々歳。わたしはポッターくんの魔の手から必死に逃げているであろうリリーと合流する予定なのです。
「…ああ、わかったよ」
だけど、予想は見事に裏切られました。
2010/01/15 ニコ
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