シリウスがアイカワさんのことを好きなのは知っていた。アイカワさんに酷いことを言うのを僕は止められなかったけれど、彼女とつきあうことになったシリウスは暴言が少しずつ減っているし女遊びもやめたし、何よりアイカワさんは笑っているから結果オーライ、だったのかな。あんなシリウスを許せる女の子がいたなんて驚きだったけど、今はただ親友の幸せを祈るだけだ。


ルーピンくん!名前を呼ばれたと思ったら後ろからワイシャツの襟をものすごい力でひっぱられた。首がしまって苦しかったのは一瞬だけで、廊下を歩いていた僕はどこかの隠し部屋に連れ込まれたらしい。(こんなところ忍びの地図にもなかったな)

「レイです。レイ・アイカワです」

暗がりに目が慣れてきて、目の前にいるのは確かに親友の恋人であるアイカワさんだった。

「ルーピンくんに頼みがあります。話を聞いてくれますか?ううん、とりあえず聞いてください」

おかしいなこんな強引な子だったかな。僕の知っているアイカワさんは遠慮がちでおとなしくて、いつも穏やかな笑顔を浮かべている花みたいな女の子だったはずだ。ぐい、と腕をひっぱられたかと思えば床がなくなって体は重力に従い落下し始めた。「ルーピンくん、しっかり着地してくださいね!」アイカワさんの言葉にとりあえず足を下に向かって伸ばせばどん、と重い衝撃。途端に光が目を突いて視界は真っ白になった。

「来たのねリーマス!」

あれ?どうしてリリーがいるんだろう?スネイプまで!

目が慣れてくると(今日は目を酷使する日のようだ)そこにあったのは広々とした部屋。テーブルの上には魔法薬の材料や道具がごちゃごちゃならんでいる。壁にはぎっしりと本がならんでいて、天窓からは太陽の光が注ぎこんでいた。

「スネイプ?どういうこと?」
「………僕にもわからない」

「ルーピンくん!わたしから説明します!」

アイカワさんはいつもとは違う、僕の親友たちに酷似している悪戯っ子の笑みを浮かべた。



「名づけて!シリウス・ブラックとくそめが…じゃないジェームズ・ポッターに痛い目みせてやろうの会!なのです!」



じゃじゃーん!わたしが言いおわると同時にリリーが杖をふりました。花吹雪が舞うのと同時に壁に垂れ幕がさがります。うん、夜なべして作ったかいがありました。上々の出来です。

「え?わけがわからないんだけど?」
「実はわたしシリウス・ブラックなんて大嫌いっなんです!ほら見てくださいこのアザ!無理矢理つきあわされることになったんですよ最低ですよね!」
「ポッターはポッターでブラックに加担してレイに糞爆弾なんて投げつけたのよ!」
「だから痛い目を見せてやらなきゃ気がすまないんです!」

よし、リリーとのタイミングもばっちり。この説明もリリーと何日も考えてつくりました。セブルスはにや、と笑って「ふん、随分おもしろそうじゃないか」と了承の言葉。

ルーピンくんを見れば、最初こそ驚いていましたが次第にその表情は曇っていき、そしてまた、笑いました。

「そっか、そうだったんだね。あいつらそんなこと僕に一言も話さなかったなあ。ははは!」

今までごめんねアイカワさん。僕も仲間にいれてくれる?

もちろん、最初からそのつもりでここに呼んだんです!と手を差し出し、ルーピンくんと握手です。

「リーマスって呼んでよ」
「はい!じゃあレイって呼んでくださいね!」

実は3日前にアザは消えていたんです。今日は説得力を出すために魔法でその痕をつけたんですが、嘘も方便と言うし、まあいいでしょう!



「ところでこの部屋は何なの?」
「リリーとつくりました!女の意地です!」

女の子ってこわい、と思いました。(リーマス・ジョン・ルーピン談)



2010/01/13 ニコ

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