「やあレイ!」
「ひい!ななな何の用ですか!?」

ポッターくんに糞爆弾を投げられた次の日の空き時間。またもやリリーのいないときに、彼はナルシスト笑いを携えて現れました。見つからないように木の影にいたのに!これはもう絶対に確信犯です。しかもわたしが心配をかけたくなくてリリーにポッターくんのことを言えないのを見透かしてるんだわ…!わたし完璧なめられてる!厨房でもらったたらこ百グラムパックを拡大魔法を施したローブのポケットの中でつぶれてしまわない程度に握りしめました。

「ひどいなあ。友だちだろう僕ら?」

友だち?わたしと、ポッターくんが?

ぶち。と、恒例の音。なんだか紐の切れるラインがわかりません。糞爆弾を投げられてもきれることはなかったのに。なんなんでしょう。

「近距離で糞爆弾を投げてくるようなひとが友だちですって?は、笑わせないでちょうだい。」
「…え?これが噂のブラックモード?」
「何をごちゃごちゃ言ってるの?そのにやにや笑いをどうにかして見てるこっちは吐きそうよ!いい加減わたしの前から消えなかったらその丸眼鏡にたらこつっこんでやるわ!!」

久しぶりだったせいか今までより辛辣な言葉がスラスラ出ていきます。ああ、わたしの思ってることを代弁してくれてありがとうわたし。わたしは今のわたしをわたしとは別の存在のわたしとして見ることに決めました。……それでは二重人格になってしまうかしら。

「レイ、今日は随分饒舌だな」
「あら?確か昨日も木の上にいたわね。いつからブラック家の御嫡子様はお猿さんになったの?」
「猿はお前だろ」
「少なくともわたしは木登りなんてしないわ」

その辺の木からとすんと降りてきたシリウス・ブラックに驚くことなどもうしません。想定の範囲内です。それよりも、今からどうやってこの場から逃げるかが問題なのです。

「どいて」
「いやだね」

やっぱりだめでした。もうこうなれば強行突破だ!と思いシリウス・ブラックとは反対方向に駆けると今度はポッターくんが立ちはだかりました。

「どいて」
「できればそうしてあげたいけど」
「どいてよ!」
「ごめんね」

そんな口先だけの謝罪なんてどうでもいいです。必死で逃げる算段をつけていると、腕を強くつかまれました。

「レイ」
「さわらないで!いたい!」

このひとはわたしの腕をちぎるつもりでしょうか、もしくは折るつもりでしょうか。どちらにしろいたそうです。というか現在進行形で痛いです。寮に戻ったらちゃんと冷やさないと。痣になってしまいます。

「レイ」

だからそんなに名前を呼ばないでくださいなんだかもうしにそうです!心臓が爆発しそう!

「レイ」

前を見れば、思いがけず真剣な表情のポッターくん。相変わらず痛い腕。熱くて、大きな、シリウス・ブラックの手。耳をつく心臓の鼓動。

「レイ、俺と付き合え」

恐る恐る振り向けば、鋭い光を宿した灰色の瞳がわたしを貫きました。



「り、リリっ、リリい!」
「レイ!?どうしたの!?」
「し、しり、シリウス・ぶ、らっくと、ひ、っく、つ、つつきあうことになっ、ちゃった、な、で…?」
「…落ち着いて、もう一度言って?」





「シリウス・ブラックと、つきあうことになっちゃったの。なんで?」

あの光から逃げることはできませんでした。



2010/01/05 ニコ

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