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「俺の制服ないか聞いて欲しいんだけど」

「制服? 今日はなんかイベントでもあるのか?」

制服を着るのにイベントもない。平日なのだから。おまけにこっちは急いでいるのに、向こうはマイペースに話の意図を掴もうとしてくれない。時間がないのに。


噛み合わない会話に俊は段々イライラしてきた。


「いいから、侑士を呼んでくれ」


初対面に不躾なお願いかと思ったが、時間は待ってくれない。理解してくれない美形と話すだけ時間の無駄なのだ。


「俺が?」


お前以外に誰がいるんだと思いながら、そうだと頷けば、美形は首を傾げながら携帯を手にした。

携帯を持っていないことを伝えても良かったが、敢えて言う必要もない。
僅かな音漏れでコールがなっていることがわかった。

朝から侑士はどこに出掛けたのだろうか。
珍しいと思いながらも、なんでこんな時に限って居ないんだよ、と俊は内心文句を垂れた。


「もしもし? あ、侑士か? 俊が制服知らないか聞いているんだが、場所知ってるか? ……、理由はよくわからないが、必要らしい」


理由はわからないって、学校に決まってる。目の前の美形は天然か、常識しらずのお坊っちゃまといったところだろうか。


「電話貸せよ」


乱暴に手を出せば、また驚いた顔をして「俊に変わる」といって携帯を渡された。なんで俺の名前呼び捨てなんだよ、と俊の機嫌の悪さは更に拍車がかかる。


「おい、侑士!俺の制服どこやったんだよ?」

「そんなの俺が知るわけないじゃん。捨てたんじゃないの?」

「捨てるわけねえだろばか。下手な悪戯してっと殴り飛ばすぞ」

「あれ? なんか機嫌悪い? 慧さんとなんかあったの?」

「てめえが機嫌悪くさせてんだよ。てかけいって誰だ」

「慧さんだよ。最近あっちは上手くいってないの?」

「だから誰だよ慧って。知らねえよそんなやつ」

「は?……ちょっと、まじで兄貴頭大丈夫?」



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