アンソロジー冒頭部分公開!

「本当に覚えていないんだな?」


 俺は起きてすぐ、イケメンの尋問にあっていた。


  Last Lie. 〜最後の嘘〜




 家で寝ているはずだった俺は、気づいたら病院にいた。
 その日はいつも以上に良く寝た気がした。

「あれ、ここどこ?」

 なんで病院にいるんだろうか。それに夏だというのに少し肌寒い。
 冷房が強く効いていて、寒さに身震いした。
 俺の疑問符に答えたのは、目を濡らし、顔を真っ赤にしていたイケメンだった。


「気がついたのか?」

「あ、うん」

「……よかった」


 切ないぐらい必死な声と共に、痛い程強く抱きしめられた。イケメンだからまだ許せるが、男に抱きしめられても嬉しくはない。


「あの、えーっと……」

「本当にもう目を覚まさないのかと思った」


 声が涙で歪んでいた。


「あのー、たいっへん申し訳ないんだけど、俺どこかであなたに会いましたっけ?」

「雄志(ゆうし)……」


 弾かれたように顔をあげたイケメンは、俺の眼前で困惑した表情を浮かべていた。


「お前、自分が誰だか分かっているのか?」

「え、もちろん」

「名前は?」

「石田雄志。あなたは?」

「羽生(はにゅう)陽一郎だ」

「なるほど」


 俺が頷くとイケメンこと羽生さんが、何かに絶望したような顔をして黙り込んだ。沈黙に耐えきれず、話を続ける。


「えっと、羽生さんと俺はどこかで会ったことありましたっけ?」

「高校の同級生」

「えっ! 高校? それ、人違いじゃないですか? 俺中学生なんですけど……」

「お前何言って、」



 老けて見えるのはショックだが、俺はまだれっきとした中学生だ。
 これでようやく冒頭に戻る訳で。


「もしかして…お前、高校のことも何も覚えていないのか?」

「覚えてないというか、知らないというか、あなたみたいなイケメンと会ってたら普通は忘れないでしょ」

「……そういう所は全然変わってないのにな」

「え?」



 傷ついた表情。心身ともに疲れきったイケメン。
 その原因は多分俺なのかもしれないが、自分は会った覚えがない以上、どうにもしようがなかった。


「あの……」

「医者とお前の両親に、意識が戻った事を知らせてくる」




 ふいにイケメンは俺から顔を背け、病室から出て行ってしまった。






続きはBL学生アンソロジー「in school with you.」にてお楽しみ頂ければ幸いです。
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2015/03/08 J.GARDEN38[@池袋]
2015/05/17 関西コミティア(頒布予定)

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