振り返らなくていい 2



「また風邪ひくか? 勉強の時間がそんなに惜しいか? 膝が痛い。風邪。いいな、お前の身体は」

「おい、やめろよ」

「それで学校休んで勉強してんだろ? ほんと良い御身分だよな」


 突っかかってくるそいつを、周りが諌める。

 しかし、その言葉はきっと誰もが心のどこかで思っていて言えなかった事だろう。現に、俺とそいつが震源のように、動揺という名の波が、空気が広がって行く。
 風邪で休む、頻度を越せば、ただのサボりのように映っても不思議な事じゃない。

 俺はその言葉に何も言い返せずに、立ち尽くすしかなかった。

 9月に入ってから風邪で休む事が増えた。
 体力も大幅に落ち、途中で家に帰る事もあった。病院の診断書をもって行けば、学校側は受理してくれるが、担任にはこれ以上休むと進学が厳しくなるとも言われた。


「バスケ部がバラバラになるようにチーム組まれてんのにさ、バスケ部のお前が使えないんじゃ意味ねえじゃん。分かってんのその辺」


 病気の事を言ってしまった方がいい。


 隆二にも何度もそう言われたが、俺はそれが言い訳のように感じて嫌だった。


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