It came the winter this year too.3
「そんなことない。そうだな....少しは落ち込むかもしれないけど、慰めてくれるんだろ?」
「当たり前じゃん。むしろ、織は一生僕だけのものになるんだから」
「勝手に決めるなよ」
「えー」
「えーじゃない」
「あはは」
口ではそう軽口に笑いながら、握られた手から緊張が少し伝わってきた。
我ながら、ダメな兄貴だと思う。双子だから、兄と言っても数分の差なのだから、あまり関係ないが。
「きっと気づかないよ」
口にすれば少し落ち込んだ。
普通に考えれば、人が生まれ変わるなんて、それが自分と近かった人だなんて、そう思わないと思う。
けれど、去年の修学旅行の時、生まれ変わりがあるか聞かれた、それが、僅かな希望のようにわだかまりとなっているのも確かだった。
「気づいて欲しいな」
「伊吹からそんな言葉が出てくるなんて....」
「だからさっきからなに驚いてんのさ」
「いや、だって....」
「僕も理事長に気づいて欲しいと思ってるよ。そうじゃないと、2人とも不幸だ」
そう言い切られて、確かにそうだとも思った。
「それは不幸じゃない。自然の摂理だ」
「そうだけど」
「でも、ありがとう。俺も伊吹には幸せになって欲しい」
「それは織が隣にいてくれたら叶うんだけど」
「あはは」
さっきの伊吹の真似をして笑った。
「あー話逸らした」
「さっきお前もやっただろう」
「僕はいいの」
「なんでだよ」
「あー明日なんの映画みよっかなぁ」
「そうだなぁ」
分かりやすく話を逸らした伊吹に乗っかり頷いた。
明日は日本へのフライトだ。
今度は何の映画を観ようかと気持ちを切り替えて、2人で家路を急いだ。