シナリオ2
背中から伝わる体温と、泣いているのか時折鼻をすする音が聞こえた。
「……ごめん……」
「…………離せ」
「……ごめん、」
「謝るだけなら誰でもできる」
ぎゅっと拳を握った。甘やかしてやりたくなる気持ちをぐっと抑えこむ。
「俺はどうしたら良い? どうしたらお前に許して貰える?」
「信用を積み重ねるのは時間がかかるけど、なくなるのは一瞬だ。俺にお前を信じろ、と言われても今は何も信用出来ない」
「…………」
辛辣なことを言っているというのは、百も承知だった。
斯波の息を飲むような音が背中ごしに伝わってくる。背中に伝わっていた体温がするすると離れていく。
「分かった……」
緊張しているような硬い声だった。
「夜遅くにごめん……」
消えるような声とともに、隣をすり抜けて玄関口へと向かう斯波の背を見つめる。
扉を開けるときに、振り返った斯波と目があった。
「…………おやすみ」
「ああ、おやすみ」
何か言いたげな視線を残しながら、斯波が部屋から出て行った。
緊張感が一気に抜ける。
のろのろとソファに戻り、薫に連絡をとった。