伊吹の変化
雅人が帰ってから、丸3日間寝込むことになった。
常駐の医者が往診に来てくれたが、薬が思うように効かず、今回の風邪はかなり頑固な風邪だった。
寮監にも交渉したのか、熱が下がるまでの間、伊吹が夜も付きっきりで看病してくれた。
その甲斐あって、4日目の朝になれば重たい身体はどこへやら、全快を迎える事が出来たのだった。
同室の薫にも迷惑をかけてしまい、健康の大事さを身をもって知った4日間だった。
「本当にもう大丈夫? あともう一日位休んだ方がいいよ」
母親のように過保護に心配する伊吹に苦笑しつつ、「本当にもう大丈夫」と言えば、煮え切らない表情ながらも引き止められはしなかった。
伊吹に寛人の時の事を話してから、以前のような危うさはなくなった。
「風邪がうつるから」と言っているのに「一緒に寝る!」と言い張って聞く耳をもたなかった所は以前のままだが、一緒のベッドに入って手を繋いで寝るだけだったから、逆にこちらが拍子抜けしてしまった位だった。
前は薫への当たりもキツかったが、他人の薫がみても顕著に感じる位、丸くなったようだった。
日本に帰ってくる前の伊吹に戻ったようで、ホッとすると共に、原因を招いていた己を改めて反省した。