装った平然
レモネードを眺めては少し飲み、眺めては飲むのを繰り返しをした。
あの時どうすれば良かったのか結局答えもでるはずもなく、この状況をどうすれば良いのかも分からなかった。
茫然自失する俺に隆二は何も言わずに傍にいてくれた。
もう一つのソファに座って隆二も手にレモネードを持ち、時折心配そうにこちらを見ては同じようにレモネードを飲んでいた。
そうやって一緒にレモネードを飲んで一息つけば、斯波との出来事が少し遠のいた気がした。モヤモヤとした想いとやるさなさが渦巻いていた胸中がほんの少し落ち着きを取り戻す。
俺の心を知ってか、「落ち着いた?」と隆二が心配そうに聞いてくる。
「はい。色々すみません」
「気にすることないからね。もうお風呂入ってると思うからゆっくり温まってきなさい」
大浴場はもう終わってるしね、と言葉が続き、時間をみれば夜も遅い時間だったことに驚いた。替えの服とバスタオルを渡され、誘導されるがまま脱衣室に入る。
普通ならようやく1人なったと安心するはずなのに、途端に不安に駆られた。
不安を隠すようにバスルームに入って湯を被り、身体と頭を洗う。湯船につかってみても、不安は拭い去ることはなく、モヤモヤとしたものがまた思い出したかのように胸中を大きく占めていく。
考えるな。
己に言い聞かせれば言い聞かせる程、嫌な光景というものは思い起こされて、振り払うために思いっきり湯船に潜った。
水の中は不思議と落ち着いて、出ては潜り、出ては潜り、ただただその行為を取り憑かれたように無心に繰り返した。
そうする事で、その間だけは嫌な事から目を背けられた。