折れた翼
小学校ではミニバス、中学高校はバスケと、学生生活を全てバスケに捧げていた俺は、靱帯断裂という最も最悪な形で選手生命を終えた。
学生バスケ界では、まぁまぁ名前が売れていた俺、水無瀬寛人(ミナセヒロト)は、バスケ界のちょっとしたニュースになった。(学生のバスケ界の世間など、狭いもんだ)
そんな俺からバスケを取り上げたら、どうなったか?
そんなの火を見るより明らか。
バスケが出来ないと、生活意欲が無くなって、勉強もそれに引きずられるように落ちこぼれて行った。
転落は滝のように速攻だった。
バスケ用語でもあるだろ、速攻。いわゆる、ファストブレイクってやつだ。ディフェンスからオフェンスへの切り替え。簡単に言うと、敵陣地からあっという間に、味方のゴールへ入れる事だ。
俺の得意技でもあったんだけれど、こんなところでしっぺ返しを食らうとは。
全く笑えないギャグだ、やめよう。
元々友達はバスケ部が多かった事もあり、友達もいなくなった。
そりゃそうだ。
華やかしいバスケ生活が靱帯断裂で終わって、かつて仲間だったやつからしたらなんて言葉をかければ良いか分からないものなのだろう。
でも、そんな微妙な態度醸し出されてたんじゃ、気まずいったらありゃしない。
自然と、少しずつ少しずつ、距離と溝が生まれてしまった。
あ、それと、バスケ部って何気にモテる。
背が高くて、割と紳士なやつが多いと思う。俺も例に洩れず、顔は平々凡々だが、少し彫りのある目と背が高いだけで、結構モテた。
これも過去形。
自分で言うのもなんだが、勉強も出来て、スポーツも出来て、背の高いそこそこな男前。
この三拍子と、兄に鍛え上げられたエスコート術を合わせれば、モテない理由がない。と思う。
好み云々は置いといてだけど。