注がれる油3



 最近学会があったこともあり、斯波との金曜日の夜の約束も行ける日が少なくなっていた。行けない時は事前にメールを入れているから、待ちぼうけを食っていたということもないはずだ。

 行けないということを謝った時も、学会ならしょうがないと返ってきた文面に安心しきっていたのがいけなかったのか。


 何にせよ斯波の虫の居所の悪い理由を聞かない事にはこうも理不尽な態度を取られる事に我慢ならない。


「何をそんなに苛立っているんだ」

「煩い。関係ないだろ」


 関係ないと良いながら、なぜこうも理不尽にされるのか、さすがの俺も腹が立ってくる。


「じゃあ、退けよ」


 覆い被さってくる斯波を突き飛ばす形で振り払った。



 思いの外強く押してしまったらしく、斯波が前の椅子の背にぶつかり「いてっ」と声を上げた。

 肩を打ったのか蹲って左肩を押さえている。
 斯波も俺にそんな反撃をされると思っていなかったらか、一瞬呆然とした顔をした。



 痛みのせいかしんなりとした斯波にさすがに悪いと思って、「ごめん。強く押しすぎた」と謝罪をすれば、ゆらりと斯波が肩を押さえたまま立ちあがった。




 立ち上がった斯波と目が合って、目に灯った怒りの火に俺はゾッとした。



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