一縷の望み



 夏休みが終われば、隆二に会う機会も増えるかもしれない。
 そんな一縷な望みを抱いてみても、望むものに対して世界は時に残酷な程広くなる。



 隆二と会う事などなかった今までのように、隆二に会う機会はめっきり無くなった。
 最後に隆二の顔を見たのは後期始業式の集会時だ。



 それから秋が深まり学会シーズンになると、学会準備の忙しさでそんな事も言っていられなくなり、あっという間に秋も終わりに近づいていた。
 




 海外の学会が重なり1ヶ月のうち1週間ちょっとしか学校行かない月が出たときは、さすがにお父様に学会参加の頻度を減らしたらどうかと提案される程だった。









「小鳥ちゃん……小鳥ちゃん!」



 何度も呼ばれて、自分の意識が朦朧としていたことに気がついた。いつもはほとんどしない時差ぼけが長引いていて、目の前に斯波がいるのに意識だけどこか他にいってしまう程、身体がぼんやりと重く、眠い日が続いていた。
 金曜の夜だと一週間の疲れも相俟って、特に眠かった。


「今の話全く聞いてなかったのか?」

「……悪い」



 聞いていなかったのは事実だった。


 白昼夢を見ていたかのようにぼんやりとしていた頭が少しずつ元の輪郭を取り戻してくる。
 適当に頷くのもどうかと思い、何の話かと問えば、斯波が少しムッとしたような顔をした。


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