初冬





 宿に帰って、俺は高熱を出した。


 病人は冬は越せない。


 俺が強く今日じゃないと行けないと思ったのは、どうやら当たりだったらしい。


 東京の病院に、万が一の時と渡されていた同系列の病院に緊急入院する事になった。


「今夜が山です」


 医者が家族達に告げる。俺はその言葉を朦朧とした意識の中聞いていた。


「俺が無理に清水寺に連れて行ったから」

「雅人(まさと)のせいじゃない。きっと、寛人はわかっていたんだ。だから、きっと今日という日にこだわったんだ」


 伊達に父親をやっていないらしく、俺の気持ちを父親が代弁してくれた。


 そうだよ、明日が来ない事は薄々感じてたから。


 両親と高城家の夫妻は、手続きやらで奔走していた。梨絵さんの家系は元々医療系で、高城家は製薬会社のため、何かしらの手続きがあるのだろう。

 呼吸が落ち着いてきて、呼吸器が煩わしくなって、顔を横にふると、兄貴が気付いてすぐに外してくれた。


「ごめん、兄貴。隆二と、話したい事が、あるんだ」

「…わかった」


 理由も聞かず、兄貴は席を外してくれる。
 部屋には、隆二と二人だけになった。



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