お盆計画=兄の信用度0%
晩ご飯を食べた後は、薫と映画を眺めながらゆっくりしていた。
最近は薫に古典を教えて貰っていたから、夕食後は勉強タイムだったが、テストを終わった今それも必要がなくなり、2人でくつろいでいた。
薫と同室になってもう3ヶ月ぐらい経つ。まだ3ヶ月しか経ってなかったのかと思える程、薫との生活は想像以上に心地いいものだった。
逆に家に居る時のようにくつろぎすぎて、よくソファーでうたた寝している俺を、薫がいつもベッドまで運んでくれる。
お互い必要以上に会話をするタイプではないからか、無理に話をしようと気張る事もない。
ぼーっと映画を見ながらそんな事を考えていれば、チャイムと共に部屋に入ってきた伊吹が隣に薫が居る事を構いもせず、そのままの伊吹が後ろから抱きついてきた。
「織いいいいいい」
薫にも了承済で、伊吹は俺たちの部屋の合鍵を持っている。頻繁に玄関の鍵をあけるのも面倒だ、というのを理由に、チャイムをして適当に入ってきていいと伝えている。
「どうした?」
「ねえ、どうしよう。嬉しいけど、嬉しくない」
「ほら、落ち着け。どうした?」
「共同研究してたチーム研究のなんだけど、今回スイスの研究費が出るっていう話になって、織とのバカンスがなくなっちゃたんだよ!」
スイスが研究費を出すという事は、伊吹が去年辺りから研究している研究の査読が通ったという事だ。 難しいと言っていたから、相当嬉しいだろう。査読が通れば、シンポジウムで発表出来る。今年のシンポジウムは、フランスのどこかで行うはずだ。
「良かったじゃないか!」
「良いけど、良くないの!」
「バカンスならいつでも行けるだろ?」
「そうだけど……」
しょんぼりする伊吹。
「でも、決まって嬉しかったんだろ?」
こくん、と伊吹が頷く。本当に、相当嬉しかったらしく、その嬉しさを隠している姿がなんとも言えず弄らしい。