長い1日の終わりは
「おかえり」
薫の柔らかな低い声と、晩ご飯の良い香りに心が洗われたような気持ちになった。
「ただいま」
呼びかけに答えれば、キッチンからお玉を持ったエプロン姿の薫が顔を出す。
「遅かったな」
「ごめん、遅くなって」
「丁度今出来た所だから、大丈夫だ」
「そっか、良かった」
「相当疲れてるように見えるが、大丈夫か?」
指摘される程、疲労困憊具合が顔に出ていたらしい。
俺は苦笑して、「今日一日変なやつにばかり付き合わされて」と言えば、薫は不思議そうな顔で「そうか」と頷き、それ以上は追求してこなかった。
色々なものが減った気がしたお風呂だった。
男同士だから良いじゃないか、とかそういう問題じゃない。
あの変態の場合。
あの後も舐め回すような視線からの攻防戦は続き、髪も乾ききらないまま、飛び出すように神の部屋を後にした。「また来てくださいね」と満足げに微笑む神に殺意を覚え、絶対行かないと心に誓ったのだ。
斯波に、神。
本当に変態にばかり絡まれる一日の密度の濃さを自覚すれば、思い出したかのようにどっと疲れが増した。