もう一度……

 あっという間に文化祭が通り過ぎたように感じて、少し寂しい気持ちになる。中々打ち解けられなかったクラスとも、仲良くなれて、すごく楽しかった。
 伊吹とも仲直り出来て、心に鎮座していた重石がとれたような気がした。


「終わったな」


 風呂を入り終えて、薫のいれてくれたココアを持って、ソファーでひと息ついていた。


「そうだな」


 テレビは薫がいつもチョイスしているが、今日はミュージカル映画が流れていた。ヒロインが、主人公に歌を返している所で、ぼんやりとしながらこの文化祭を振り返る。

 本当に早かった。
 楽しい時というのは、本当にあっという間で、明日からまた普通の日常に戻ってしまうと思うと少し寂しい気持ちもした。


「楽しかったか?」

「ああ、すごく。薫は?」

「去年より楽しかった」

「そうなんだ?」

「ああ、お前がいたからかな」

「なっ……」


 真面目な薫が、あまりに率直にそんな事をいうものだから、思わず言葉に詰まる。


「伊織、バスケ部に入る気はないか?」

「え……」


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