今はこのままで(Ibuki.side)

IBUKI.side

 段々気持ちが落ち着いてきて、嗚咽を飲み込む。
 そうすると織が顔を覗きこんできて、「大丈夫か?」と言ってくれた。


「大丈夫」

「そうか」


 抱き合っていた織がゆっくりと離れていく。織の制服の肩の部分は僕の涙で濡れていて、なんだかそれがすごく懐かしいような気がした。


 この違和感はいつからだったんだろう。
 いつから、織がこんなに遠くなったんだろう。


 最初はこの学園に来てからだと思っていたけれど、ずっと昔からのような気がして、そう考えた自分にゾッとした。

 ずっと繋がりが欲しかった。
 やっと繋がれたのに、ぽっかりと小さく心の隅に空いた穴はなんなんだろう。


 近づけば近づくほど、遠くに感じて。
 焦りばかりが空回って、織を傷つけた。


 りゅうじって誰?

 織の何?


 はっきり分かればこんなモヤモヤした想いを抱えなくて済むのかもしれない。


「あのさ……」


 辺りを見回していた織が、僕を見た。



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