キャンプファイヤーを背に
そんなこんなで、授賞式も終わり、今は後夜祭の名物であるダンスを待っているだけとなった。
相手が決まった生徒は、キャンプファイヤーの近くで抱き合ってイチャイチャしたり、放送部がかけている音楽に合わせて体を揺らしている。
ダンスは一週間くらい前から、ダンスの申し込みというものが始まっていて、俺は結局相手を決められず、こうして薫と二人でキャンプファイヤーと、ダンスパートナーが決まった生徒たちを呆然と眺めてた。
「結局………パートナーは決めなかったのか?」
結構シビアなところだと思っていたのか、少し薫が考えた後、そんな事を聞いてきた。
教室でも何度も誘いを受けていたが、全部断りをいれていたことも薫は知っている。
「なんか、な。タイミングを逃したみたいで。それに、元々ダンスは苦手だから、出来れば回避したい」
知らない相手なら尚更だ。
「そうか」
薫がゆっくり頷いた。
「薫は?」
「俺は部活の独り身の奴の相手だ」
「そっか。薫は優しいな」
「そうでもない」
「優しいよ」
今も俺と一緒にいてくれているのは、薫の優しさに他ならない。
まだ大丈夫だ、と俺と時間潰しに付き合ってくれている。
日下は何人かと踊らなければいけないらしく、結構忙しいようだ。ダンスの相手は一人じゃなくて良いというから驚きだ。
俺と薫がぼーっと座っていると、炎を背にしてこっちに向かって歩いてくる影があった。
見間違えるはずもない。
俺の半身。
伊吹だった。