残像 (Ryuji.side)
(Ryuji.side)
「あれは……」
その姿を見つけたのは偶然だった。
来客を相手にしながら、校内を一緒に案内していて偶然その姿が目に入った。
――小鳥遊伊織くん
この間、突然泣いて帰ってしまったものだから、少し気になっていたのだ。
元気そうでよかった。
バスケが好きだと言っていた彼が、ハーフコートのスタートラインに立った所だった。
「ああ、バスケですか」
俺の視線に気がついたのか、来客がそう呟いた。
「そうですね」
「懐かしいですね。私も昔はバスケをしていたんですよ」
そう話しだした来客の言葉に、そうなんですか、と適当に相槌を打ちながら、視線は彼から離すことが出来なかった。
ボールが渡った瞬間の、軽やかな身のこなしに目を奪われる。
昔見た、誰かと似たようなフェイントのかけ方に、3ポイントラインからのフェードアウェー。
まるで、寛。君みたいだ。
天国にいるであろう彼に、心の中で話しかける。
「全国大会にはいけなかったのですが、関東大会までは行けたんですよ」
「すごいですね」
仲間に囲まれて喜ぶ彼に安堵して、自慢話を披露する相手に、相変わらず適当に相槌を打ちながら、体育館を後にした。
Ryuji side end...