いざ、バスケ?2
「ちょちょちょ、伊織ちゃん危ないからフリースローにしときや。ほら、見てみあのごっつい選手ら。あんなん伊織ちゃんの前に立ちはだかったら終わりやで」
「大丈夫」
「可愛い顔に傷ついたら弟くん泣くでー?」
日下に子供相手にされているように言われ、思わずムッとする。
こいつの言い方やたら癇に障る時あるんだよな、そう思いながら、「大丈夫だ」と言い切った。
「わかった。けど、怪我せんといてな」
「ああ」
俺が頷くと日下は心配した表情を浮かべていたか、観念したようにハーフコートの中央に立った。
「今年こそ勝つでー」
「言ってろ」
ボールを持っている日下が一度相手にボールをパスし、戻ったところからゲームが始まる。ボールが相手に取られるまで、何回かゴールを決めるチャンスはある。
「いくでいくでいくでー!」
そう言いながら、日下が薫相手にドリブルで攻めていった。
左手で薫を制しながら進んでいるところはいいが、日下の前方右にはもう一人相手が残っている。
さて、どう乗り切るか。
完全に薫しか見ていないと思った日下だが、インサイドフットターンをしながら、ボールを左手に持ち替え、右相手のスティール(カット)を交わした。
うまい。
「いけー日下っ!」
拳を握り、叫んだ。